「好きな事を仕事にする」の「好き」を「マインドセット」で考えてみる 〜 旅好きが高じて「バックパッカーの様なマインドセット」の仕事に転職した話
筆者の場合「より楽しい仕事」を探したら「旅の嗜好」と重なった
筆者は2年ほど前に転職をしました。
転職活動は「よほど希望に叶う案件があれば」というスタンスで2年ほどかけて気長に吟味しながら行いました。というのも、前の職場や会社が嫌だったという理由ではなく、30代半ばを過ぎ、社会人人生の折り返し地点を迎えるに当たり改めて自分がやりたい事の棚卸しをして、後半戦(まだ20年あるのか・・・)に向けて仕事の内容をガラッとUpdateしてみたいと言うのが動機だったためです。
そして新しい職場で働き始めて2年数か月ほど経った今、おかげさまでとても多くの刺激を受けながら楽しく仕事をしています。
その中で、実は転職活動で大事にしてきた価値観が、元バックパッカーである筆者の旅への嗜好(=筆者にとっての「好き」)に大いに繋がるところがある事に気づきました。それは単純に「海外出張が多い」という事だけを指している訳ではありません。
そこには「旅」に重なる様々な要素が含まれているのですが、ではなぜそのような帰結になったのかについても参考までに少し紐解いてみたいと思います。
「好きな事を仕事にする」は慎重に考えないと詰む
さて、冒頭の「好きな事を仕事にする」というお題に戻りましょう。
「人生の大半は仕事をして過ごすんだから、好きな事を仕事に出来れば幸せに決まってる!」
という意見ももっともだと思いますし、
「仕事には辛いこともある。もしかしたら好きな事が嫌いな事に変わってしまうかもしれない」
という話も、とても説得力があります。
恐らく両方とも正しいのでしょう。
ただ、これだけでは考察が不十分で、「好きな事」の意味を十分に考えないと上手くいかない可能性は非常に高いと言えるでしょう。
「自分が好きな物事」を生業にしている会社でも中に入れば見え方は異なる
例えば、写真やカメラを趣味にしている人であれば、選択肢の一つとしてカメラメーカーのような写真・映像業界への就職や転職が思い浮かぶかも知れません。
しかし、もし希望通りの企業に就職・転職出来たとしても、実際に日々目の前で扱うのは「カメラ」そのものでない事の方が多い点に注意しなければなりません。
例えば営業職であれば、実際に日々目にするのは営業戦略や目標数値、販売店・代理店のリストや実績などであり、商品開発やマーケティングといった場合でも、日々直面するのはどちらかと言えば競合製品との差別化の難しさや技術的制約との戦い、カメラ市場そのものの縮小への対応策といった難しい問題だったりするでしょう。
つまり外から見ているのと中で実際に提供するのとでは大いに見え方が異なる事が多いのです。
結局のところ「好きな物事を扱っている」だけではモチベーションは保てない
では、カメラ好きがカメラメーカーに勤めるのがNGなのかと言えばもちろんそんな事はありません。カメラが好きで、かつ営業活動やマーケティング戦略などと取っ組み合いをするのが好きなのであれば、頑張って目指してみるべきでしょう。
しかし大事な点は、「カメラそのもの」よりも、「営業活動やマーケティング」と言った仕事の内容の方が圧倒的に重要度が高い、という事です。
あくまでもあなたの仕事の評価は仕事の内容によってされる訳であり、日々脳みそを使うのはカメラでいい写真を撮る事ではなく、数字とにらめっこしながら代理店などに足繁く通う仕事であったり、成熟してしまったカメラ市場で競合他社と小さなパイを取り合う戦略を考える事だったりする訳です。
誤解しないで頂きたいのは、それらの仕事自体はとてもやり甲斐のある事です。しかし、それはカメラに対する情熱とは別モノであって、そうした職種が性に合うかどうかがモチベーションを保つのに大事であるという事です。
さて、ところで筆者としては、こうした営業や商品開発といった「職種」ですら「好き」のものさしとしては不十分だと思っています。特に新卒採用の場合、職種はローテーションしてしまう場合も多いためです。
そこでもっと大事なのは、職場あるいは会社全体に流れる「マインドセット」なんじゃないかと思っています。
一番大事なのは「職場全体が持つマインドセット」かも知れない
と言われてもよく分かりませんよね(笑)
ではここで手前味噌ながら筆者の些末な経験から少し引用させてください。
筆者が転職活動で求めた条件
ざっとこんな感じです。
- 変化に富んだ業界
- 事業そのものがまだ若く改善の余地が大きい
- 柔軟性とスピード感があって小回りの効く組織
- 社員の裁量が大きい
- 海外事業・投資を積極的に行っている(出来ればアジア)
- 意思決定の中心とCenter of Excellenceが日本にある(≒日系企業)
一言で言えば「変化に富んだスピード感のある事業を海外でも行っていて、その中で大きな裁量を持って自由に提案していける仕事がしたい」という感じでしょうか。
改めて見るとまるで「海外進出に積極的な羽振りの良いベンチャー企業」みたいな虫の良すぎる条件ですね・・・道理で2年以上もかかった訳です^^;
なお「条件」と言うと給与水準や福利厚生などもありますが、そちらは「現状より明らかに悪くならなければ良い」という程度でした。
結局全て「旅の様なマインドセット」だった
で、上で挙げた条件なのですが、今思えば全てマインドセットの話だった事に気付くのです。
しかも、それは筆者がバックパック旅に求めるものに面白いほど重なることに気付きました。表にしてみます。
いかがでしょうか。
ここで注目して頂きたいのは、「自分の趣味や関心」や「職種」といった項目が一つもないことです。
※もちろん筆者の場合、転職=経験者採用でしたので、筆者が経験した事のある一定の職種や関連のある業界への応募になりますが、それは筆者の好みに関わらない前提条件であって、「好きな事を仕事にする」の「好き」とはまた別の話です。
いずれも、「変化やスピード感を好む」であるとか、「仕事の仕方は社員の裁量に任せる」と言ったような「マインドセット」に関わる内容になっています。
当時はそこまで明確にその事を意識はしていなかったのですが、実は前の会社で何度か異動を経験した中で、筆者が特にやり甲斐を感じた職場では共通してこのような特徴を持ち合わせていたため、自然とこうした条件を想起したのかも知れません。
採用する側が重視するのも同じマインドセットの人⇒合致すれば職場から必要とされる人材に
実は今の職場で、少しだけ採用や育成の方向性のような話にも加わっています。
極めて一般的な話なので書いてしまうと、その中でもやはり
「自分たちと同じマインドセットを持った人に来てもらった方がお互いハッピーだよね」
というような話をしています。更には、
「それが合う人にはより大きな仕事にチャレンジしてもらいたいよね」
と言うような話もしています。
当たり前のように聞こえるかも知れませんが、これは言い換えると、
「我々の事業にはこういうマインドセットを持った人が必要で、そう言う人にもっと頑張ってもらうことで事業も成長するしその社員も成長できる」
と言う事なのです。
例えば先ほど上で挙げた「変化やスピード感を好む」であるとか、「仕事の仕方は社員の裁量に任せる」といったマインドセットの職場に、「決められたルールに則って正確に業務を遂行する事がモットーです!」という方が来ても、あまりハッピーな結果にはならないでしょう。(誤解無きように補足すると、正確に作業をこなせる人材と言うのは業務によっては非常に重宝される優秀な人材です。筆者はしょっちゅう数字の桁や単位を間違えますwだってベトナムドンとか桁多すぎだし)
つまりマインドセットが合う事で、その職場から必要とされ信頼される可能性が高い訳で、それは仕事に対するモチベーションに大きく繋がる要素と言えます。
マインドセットの相性はモチベーションに繋がる
こんな記事を見つけました。
転職活動で「職場の雰囲気を重視」は9割
この記事で触れられているのは「休暇が取りやすい」とか「プライベートの話もしやすい」といった、文字通り「雰囲気」の話なのですが、転職にあたってこの点を重視する人が最も多いと言うことは、逆に言えば転職の動機として前職の雰囲気が合わなかった事が割とメジャーな理由である、と考えることも出来ます。
で、実は上で挙げた「マインドセット」って、まさにこの延長の話なんですよね。上のアンケートで出てくる「雰囲気」は「辞めたいと思わない」という最低限のレベルの話であり、さらに「マインドセット」まで合致すれば職場から必要とされ期待を得る事でさらに高いモチベーションに繋がる、という事になります。
コロナ時代・在宅勤務時代にはより重要に
そして取り分け昨今のコロナ禍、そして在宅勤務の割合が増える時代においては、マインドセットの合致はより重要になっています。
つまり、在宅勤務ではより裁量に任せられた仕事の仕方になる訳ですが、期待もされずモチベーションも低ければ、当然サボってしまう運命をたどります。しかし期待とモチベーションが高ければ、ちゃんと成果を出そうと言う方向に持っていく事が出来ます。
それはしいては、昨今話題になっている「職場に居れば仕事をしているように見える日本型のメンバーシップ雇用」から「仕事のスタイルは問わず成果で評価されるジョブ型」と呼ばれる雇用形態への移行とも相性が良いと言えるでしょう。
同じ事はどんな仕事にも当てはまる
これはどんな仕事にも共通ではないでしょうか。例えば車のディーラーについて考えてみます(全然車業界の知見は無いのでトンチンカンかも知れませんがご容赦を)。
例:あなたならどちらのディーラーで働いた方が幸せそうですか?
<転職を考えているあなたの考え>:「誠意を持って顧客が知りたいことや要望に答え、顧客の信頼を勝ち取って長期的なロイヤリティを築いていきたい」ちなみに好きな車は【欧州車】。
<転職先候補【欧州車】ディーラーA>:「うちはとにかく新車の販売台数が最重要。手段は問わない。アフターケアは二の次だ」
<転職先候補【国産車】ディーラーB>:「販売台数だけでなく、顧客満足度も大事。お客様の信頼を得ることが長い目で見れば当社の利益に繋がる」
・・・・・・すみません、例が難し過ぎました(笑)
話の流れから行くと「車の好みは置いておいて国産車ディーラーBに就職!」という結論になりそうですが、そしたら国産車買わなきゃいけなくなりますねw
という事で、ディーラーBが良さそうだけどどうしても欧州車に乗りたい、というワガママなあなたにとっての正解は、
「どちらのディーラーも選ばずB社のような欧州車販売会社を探す」
になるでしょう(笑)
とにかく、ポイントは、B社のようなマインドセットを持った販売会社で働いた方が、「誠意を持って顧客の信頼を得ていきたい」というあなた自身が不満なく働けるだけでなく、あなたの考えが社の業績向上のための方針にマッチするため、より大事な顧客を任せてもらえたりと言ったプラスアルファが期待できるという事です。
まとめ
ここまで書いておきながら、筆者も分かっているんです。
そんな条件が全て合うような職場なんてそう簡単には見つかりません。
かく言う筆者だって二年以上見つかりませんでした。
ただこの記事で申し上げたかったのは、就職先や転職先を検討する時には、表面的な業界や職種だけでなく、このようなマインドセットの面を重視してみると結果的に満足度が高いかも知れません、と言うことです。
考え方の一例として、誰かの参考になれば幸甚です^^
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