バンコク・ドンムアン空港に降り立つと、旅の玄関口に立ったような気分になる。
それに共感してくれる旅人がどれほど居るのかは分からないが、実際問題、バンコクはアジアの玄関口だ。ラオス、カンボジア、インド、そして今回のスリランカなど、アジアの多くの国に行くために皆ここを通る。もしかしたら他のルートもあるのかも知れないが、休暇の日程が決まり次第、筆者の手は半自動的に東京-バンコクの便をブッキングするように出来ている。バンコクに集まってくる旅人たちの緩い空気で日常に凝り固まった自らを解きほぐしたいのかも知れない。
さて、今回も例年のごとく23時ドンムアン着のUAでバンコクにやって来た(後注:現在はUAのBKK便はない)。今回は運がいいことに、エアポートバス乗り場でいつ来ると知れないカオサン行きのバスを待っていると、夫婦らしき旅行者がタクシーの相乗りを持ち掛けて来た。3人で350バーツ(約1100円)で、筆者は100バーツで良いという。こんなよい話はない。幸先が良い。
彼らはカナダ人と台湾人の夫婦で、サムイ島でダイビングをして来た帰りだという。筆者が翌日からスリランカへ行くと申し出ると、
「あそこは戦争中だが大丈夫か」
としきりに心配してくれる。大丈夫である。今回諦めたネパールよりは格段に安全なはずである。相対的なものでよいのかという突っ込みも有りそうだが、とりあえずそういう事にしておく。
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カオサンに着くと宿探しである。彼らは今回初めてのバンコクとの事なので、筆者のオススメの宿に連れて行ってみる。一泊500バーツ前後(約1500円)でエアコン付き、ホットシャワー希望というから、筆者も良く使う「サイアムオリエンタルイン」が適当だと思われた。
しかし残念ながら彼らはもう少しきれいな宿が希望だという事で他の宿を捜すという。筆者的にはここはカオサンの中では上等な方なのだが、筆者の様な若い独身者とは選択基準が異なるのは致し方あるまい・・・。というわけで、お互いの旅の充実を願いつつ別れる。希望どおりの宿が見つかると良いのだが。
0時を回っていたが、空腹と麦酒欲しさのため、深夜のカオサンへ繰り出す。相変わらず騒々しい街である。日付が変わったというのに欧米人や地元の人々が踊ったり騒いだりしている。筆者はここを訪れるのは8回目くらいになるが、実はこの街はあまり性に合わない。爆音が苦手なのだ。しかし一方で、ここに来ると旅のスイッチの様なものが入るというのもまた事実なのだ。いつ来ても何が楽しいのか分からないこのお祭り騒ぎが自分にとっての旅のオープニングセレモニーの様なものになりつつある事は認めねばなるまい。
といっても旅の醍醐味は人々とのふれあいであるとの信条は変わらないため、チャーンビア(シンハービアよりちょっと安い)とセンミーナームを飲食しながら
「What’s the meaning of “Chang”?」
などと店員に語り掛ける。「シンハビア」の「シンハ」はライオンだと聞いていたので、「チャーン」も何かの動物のことかも知れないと気になっていたのだ。するとこの英語が通じない。筆者も、英語力でタイ人には勝てる気はしないが、一応簡単な英語なら話せると自負していたものである。
話しているうちに、
「What do you mean by “Chang”?」
なら通じるということが判明。英語とは難しいものである。ちなみに「チャーン」とは「象」のことだという。なぜビールの名前には「タイガー」だとか「キリン」だとかといった動物の名前が多いのであろうか。
CASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600 (7.1mm, f/2.8, 1/8 sec, ISO0)
そんなこんなで既に1時を回り、トゥクトゥクのおっさん達から「ススキノ、ススキノ」と声を掛けられながら宿へ戻る。ほぼ例外なく「ススキノ」なのだ。様々な歓楽街がある中でなぜあえて「ススキノ」なのだろうか。口コミというのは恐ろしい。筆者も下手に曖昧な情報を発する事はできないな、と思うのである。
では、読書の友のチャーンビアをもう一本もらって部屋に戻る事にする。こんな所まで来てなんだが、江戸川乱歩の小説の続きが気になってしようがないのである。
明日は1日バンコク市内をブラついた後、いよいよスリランカへ渡る予定だ。
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[2004.9.22]
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