リスボンでは「ファド」を聴きたいと思っていた。
ファドはポルトガルの下町大衆歌謡であるという。「地球の歩き方」にはこの様に紹介されている。
その起源ははっきりしない。一説には、大航海時代にイスラム、アフリカ、ブラジルなどの民族音楽がポルトガルに伝わり、19世紀半ばにリスボンの下町で生まれたといわれている。以来、場末の酒場やカフェで歌い継がれ、船乗りや売春婦、浮浪者など、どちらかというと社会の底辺にいる人々が聴く音楽だったらしい。
この一節だけでワインを5杯くらい飲めてしまいそうではないか。
漁師の妻のサウダーデを唄った「Barco Negro(和名:暗い艀)」
ファドを一躍世界に知らしめたのは、1954年のフランス映画「過去をもつ愛情」の中でアマリア・ロドリゲスが歌った「暗い艀(はしけ)」だと言われている。
この歌は、漁に出た夫が海で難破したと知った妻がその悲哀を歌ったものであるようだ。リスボンは古い港町であり、このような情景が珍しくなく、そうした風土から生まれたのがファドで歌われる「サウダーデ」という心情だと言われる。サウダーデとは、悲しみや懐かしみ、諦観の入り混じった郷愁のようなもので、ポルトガル人にしか理解できない感情とも言われる。
ファドハウス「Clube de Fado」
リスボンにはファドを聴かせるファドハウスと呼ばれるレストランがある。
今回訪れたのは「Clube de Fado」である。雨のロカ岬で出会った料理人のNさんがお勧めして下さったファドハウスである。比較的こぢんまりとした店内で、ポートワイン、グリーンワイン(vinho verde)などの様々なポルトガルワインを楽しみつつ、哀愁の漂うファドのライブに身を委ねる事が出来る。ファドに聴き入りながら気付かぬうちについつい杯を重ねがちなので用心しなければならない。まあ、それもまたサウダーデであろうか。
OLYMPUS IMAGING CORP. E-410 (14mm, f/3.5, 1/15 sec, ISO1600)
女性のファディスタ(歌い手)はこのように黒いショールを肩に掛けて歌うのが伝統的なスタイルであるようだ。
また、この女性ファディスタから見て右手側でおっさんが弾いている丸いギターのような弦楽器は「ギターラ」と呼ばれるポルトガルギターで、12弦を有しており、その響きはインドのシタールに似た独特な哀愁漂うものである。所謂ギターとは起源を異にしていると言われる。
OLYMPUS IMAGING CORP. E-410 (30mm, f/5, 1/60 sec, ISO1600)
OLYMPUS IMAGING CORP. E-410 (29mm, f/5, 1/10 sec, ISO1600)
OLYMPUS IMAGING CORP. E-410 (32mm, f/5.2, 1/13 sec, ISO1600)
OLYMPUS IMAGING CORP. E-410 (28mm, f/5, 1/20 sec, ISO1600)
なお、これらのファドハウスは通常20時以降に開店し、食事はやや割高であることが多いようなので、事前に食事を済ませてから飲みに来るのがおすすめである。
明日は漁師の町ナザレを目指す。
Clube de Fadoの位置
(2007.7.15)
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