ナコーダ・マスジットのモスクから徒歩10分弱のところに、「コルカタの中華街」なる面白い場所があるというので向かうことにした。
その中華街の付近で、折よく「CHINA TOWN CORNER」と銘打つ屋台があったので、昼飯をキメ込むことにする。今回ダージリン・シッキムを目的地とした理由の1つに、「インドで中華・チベット系料理を食べる」というものがあったのだが、図らずもコルカタでも叶えることが出来そうだ。
SONY ILCE-7C (36mm, f/3.2, 1/200 sec, ISO100)
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インドで唯一、中華街が存在するコルカタ
インド中華料理をパクつく前に、「インドの中華街」なるものについて少々真面目に触れることで脳内糖分を消費しておきたい。
そもそもインドにおけるチャイナタウンは、デリーやムンバイなど他の主要都市には存在せず、唯一コルカタにのみ成立したようだ。
理由はいくつかあって、まずコルカタが中国南部から最もアクセスがよく、かつ英領インドにおける最大の港湾貿易都市であったこと、加えて、当時の植民地政府の移民政策がコルカタでは比較的寛容で華僑の定住エリアが形成されやすかったこと、などが背景にあるらしい。
確かに以前北インドを旅した際に、バラナシなどで中華料理屋を見かけたことはあるが、チャイナタウンのような町を形成していた感じでは無かった。あれはどちらかというとバックパッカー向けに地元のインド人が見よう見まねでチャーハンなんかを出していたような雰囲気だったように思う。
コルカタにチャイナタウンを形成した華人は、マレーシアなどへの移住民で知られる「客家」と呼ばれる広東省辺り出身の人々で、ヒンドゥ教徒やムスリム系のインド人が忌避する牛や豚の皮革関連の商売を行ったという。
コルカタの中華街と憧れのチョウメン
さて、真面目な話をして腹が減ってきたので注文をしよう思う。屋台をのぞくと、美味そうな小麦麺が鎮座している。これは期待できそうだ。
SONY ILCE-7C (28mm, f/2.8, 1/50 sec, ISO100)
屋台の店主ニキはあまり英語が通じないようだったが、そばに少し英語を話せる少年がいたので、看板の写真を指さしつつ彼に「フライドヌードル」と伝えてもらう。
SONY ILCE-7C (28mm, f/2.8, 1/50 sec, ISO100)
店主ニキが豪快に麺を炒め始めた。これはインドに残る中華焼きそば、「チョウメン」に違いない。今回の旅でお目当てにしていたインド中華麺のひとつで、ダージリンやシッキムでお目見えする予定が、ひと足さきにコルカタで出会えるとは幸先がよい。
SONY ILCE-7C (28mm, f/4, 1/30 sec, ISO100)
ところが、この風景には少々違和感を覚えた。なんだろう・・・?
そう、店主ニキも少年も、ガチのインド人ルックなのだ。
中華街ならば華人が多いのかと思ったのだが、どうもそういうことでも無さそうだ。後で知るのだが、現在この辺りに残っている華人はほとんどいないようだ。
さて、チャイも出すようだったので、少年にチャイをお願いした。
SONY ILCE-7C (50mm, f/5.6, 1/50 sec, ISO200)
素焼きの使い捨てチャイカップである。素晴らしい。これだよ、これ。
SONY ILCE-7C (28mm, f/5.6, 1/125 sec, ISO100)
やがてチョウメンが眼前に現れた。これは・・・美味そうすぎてインド人もビックリである。
SONY ILCE-7C (44mm, f/3.5, 1/800 sec, ISO100)
コルカタの喧騒を眺めながらのインド中華、チョウメン。先ほどインドに着いたばかりなのにもう家に帰ってもいいと思えるほどの最の高な体験である。
SONY ILCE-7C (28mm, f/4, 1/400 sec, ISO100)
コルカタの中華街「ティレッティ地区」の場所
さて、腹も満たせたところでコルカタの中華街散策と洒落込もう・・・という目論見であったが、出足で少々つまずくことになる。Googleマップ上で示された場所に、中華街が無かったのである。
いくつかの日本語の情報源によれば、「ティレッティ・バザール」あるいは「ティレッタ・バザール」という場所にコルカタの中華街があるいうので、Googleマップ上でそれらの場所を検索すると、下の黒い丸の場所が示されるのだが、実際の中華街はその南側のオレンジの辺りなのだ(その辺りの住所もティレッティ地区らしい)。
なので、中華街を訪れるなら「ティレッティ・バザール」ではなく、下の中華料理店を目指すと塩梅がよい。
まずは肉成分多めの路地に迷い込む
それは後の話、とにかくもまずは上のマップの黒い丸の辺りに迷い込むことになった。えらいドローカルな路地(ドローカルでない路地などないのだが)で、これはこれで大変趣深く、後から思えば中華街よりもこちらの方がよりワクがムネムネしたようにも思う。
SONY ILCE-7C (75mm, f/4, 1/80 sec, ISO100)
路地を歩いていると、心なしか肉屋が多いように感じた。ベトナムでもそうだが、同じ業態の店がひとところに集まる傾向は、世界各地のあるあるなのだろう。
SONY ILCE-7C (60mm, f/4, 1/60 sec, ISO160)
SONY ILCE-7C (66mm, f/4, 1/160 sec, ISO100)
豪快に肉を切るニキがいた。中々のコワモテのように見える。
SONY ILCE-7C (38mm, f/3.2, 1/40 sec, ISO320)
しかし、興味深そうに眺めていると、存外愛嬌のある笑顔を見せてくれた。コルカタの肉屋でまさかのギャップ萌えである。
SONY ILCE-7C (38mm, f/3.2, 1/40 sec, ISO320)
肉切りニキの笑顔に癒されていると、何やらヤギの鳴き声が聞こえてくる。すぐそばにヤギ小屋があるではないか。
SONY ILCE-7C (28mm, f/2.8, 1/40 sec, ISO100)
お前たちこの後・・・いや、みなまで言うまい。
カレーもしくはダールの店があった。これはさっきのマトn・・・いや、みなまで言うまい。
SONY ILCE-7C (28mm, f/4, 1/30 sec, ISO200)
肉屋通りの風情の良さに忘れるところであったが、そういえば、中華街どこ行った?となるわけである。
ようやく中華街へ、しかし・・・
中華街の「ちゅ」の字も見受けられないため、その辺りの人に尋ねてみたところ、「チャイニーズタウンはあっちだ」という。「あっち」というのがまさに、先ほどのマップのオレンジ色の丸の辺りなのだ。
インド人の「あっちだ」の信憑性が5%程度だとしても、行ってみないことには埒が開かないので、行ってみることにした。
SONY ILCE-7C (28mm, f/2.8, 1/800 sec, ISO100)
パッと見、漢字の看板などの中華風情は感じられない。しかし奥の方へ進んでみると・・・
おお・・・
SONY ILCE-7C (28mm, f/2.8, 1/640 sec, ISO100)
ついに漢字に出会うことが出来た。もしかすると筆者がインドで見る初めての漢字かも知れない。さらに進んでいくと、「金」という文字が見えてきた。
SONY ILCE-7C (28mm, f/2.8, 1/500 sec, ISO100)
こちらは中華料理店である。「中印飯店」とあるので、折衷的な感じなのかも知れない。
SONY ILCE-7C (28mm, f/2.8, 1/200 sec, ISO100)
コルカタに中華街らしきものは確かに存在した。
ただ、期待していたものとはかけ離れていた、と言わざるを得ない。一言で言えば、華人の生活や存在感をほとんど感じないのだ。
少し調べてみたところ、1962年に勃発した中印国境紛争でインド国内の反中感情が急激に悪化、商売も難しくなり、多くの華人が国外退去せざるを得ない状況に陥ったようだ。
確かにこの地に存在した、そしてそう遠くない未来に消滅してしまうかも知れないインドの異邦人街の、その名残を見ることが出来ただけでも幸運なのかも知れない。
残念な思いで、中華街の最寄りのメトロ駅であるのCentral駅に向かって歩を進める。ベンガル虎を称するトラックがいた。
SONY ILCE-7C (31mm, f/3.2, 1/200 sec, ISO100)
目が描いてある。アジアの船などに描いてあるものと同じく、ずいぶんと目力の強い目である。
SONY ILCE-7C (35mm, f/3.2, 1/500 sec, ISO100)
この後、初のコルカタメトロに乗り、サダルストリート方面の宿に向かう。
つづく
(2025年1月25日の記録)
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