今日はベトナムの歩道について語りたい。
読者諸兄におかれては、「歩道」と言うものをご存知だろうか。
「歩道」と言うのは、車道の脇に存在し、人が歩くための道である。つまり「歩く道」、それが「歩道」である。
一方で、「車が通る道」のことを「車道」と呼ぶ。
以上を総合的に判断すると、一般に車は車道を走るものであり、歩道には車やバイクは走っていないという事になる。
下の写真を見て頂くとお分かり頂けるだろう。模範的な歩道と車道の図である。
一体何故このような
「鼻毛とは鼻の毛の事である」
「鼻に生えているのが鼻毛であり、耳に生えているのは鼻毛ではない」
と言うような実に馬鹿馬鹿しい説明をしているのかと思われるかも知れない。もう少しお付き合い願いたい。
「歩きにくい」というより「それが歩道か否か」のベトナム
まずは下の写真をご覧頂きたい。ベトナム・ホーチミン市において筆者が通勤中のタクシーから撮影した一枚である。
Apple iPhone 12 Pro (4.2mm, f/1.6, 1/120 sec, ISO40)
もはや歩きにくいであるとかそういう問題ではない。これは歩道なのか、車道なのか、それが問題だ。
まるでエッシャーの騙し絵のごとく脳内に混乱を来すが、いやしかしバイクが大量に走っているのだから、ここは歩道であるはずがないのだ。あるはずがないのだ(大事な事は2回言うべしとじいちゃんの遺言にありました)。
しかし、やがて衝撃的な事実を目の当たりにする。
なんと、バス停があるではないか!しかもバス待ち用のベンチらしきものまで置いてあるため、もやはここが歩道であることは疑いようもない。
Apple iPhone 12 Pro (4.2mm, f/1.6, 1/120 sec, ISO100)
つまり、これらのバイクの群れは白昼堂々と歩道を爆走しているのである。
その後分かった事だが、ベトナムにおいては通勤ラッシュなどの混雑時にはこのように歩道が過剰に有効活用されるのが一般的で有るようだ。
逆に言えば、歩道の基本的人権(?)はいとも容易く侵害される存在で有るようだ。
下の写真をご覧頂きたい。こちらもホーチミン市内の某所で撮影したものである。
Apple iPhone 12 Pro (4.2mm, f/1.6, 1/320 sec, ISO32)
ではこの画像を用いてこのような不正ログインチェック画面が表示されたとしたらどうであろうか。
非常に困るとしか言い様がない。
緑豊か過ぎて歩けないベトナムの歩道
下の写真の様な事例もある。
Apple iPhone 12 Pro (4.2mm, f/1.6, 1/540 sec, ISO32)
「ホーチミンとは緑豊かで美しい町でだなあ」・・・と思われる方は前向きで非常に素晴らしいと思う。
しかし、ここにだけは街路樹を植えて欲しくなかった。
「緑豊か」と言えば下のような事例も見受けられた。「緑豊か」と言うレベルを遥かに超越している様に思われる。
Apple iPhone 12 Pro (4.2mm, f/1.6, 1/75 sec, ISO125)
なお、この豊かな緑は、1週間ほどこの状態のままであった。
筆者は「これはバイクが歩道を走るのを防止するための措置か」と一瞬無駄に前向きに考えたが、これではそもそも人すら通る事が出来ないので違うであろう。
有効活用され過ぎて歩けないベトナムの歩道
下記の店舗においては、どこまでが店舗でどこからが歩道なのかが全く分からない状態である(いや分かる)。
むしろ人情としてはこれらの商品を毎朝陳列したり毎夕撤収したりする店主の苦労を心配してしまうほどである。
ILCE-7C (62mm, f/4, 1/640 sec, ISO400)
下の事例に至ってはもはや車道すら占拠している様に見えるが、目の錯覚であろうか。
Apple iPhone 12 Pro (6mm, f/2, 1/210 sec, ISO25)
なお、歩道とは違い、車道については占拠してはならないという法が一応存在するようだ。
下の写真はハノイの旧市街の飲み屋の店先の模様である。ベトナム人達と「モッハイバーヨー!」(乾杯の音頭)をやっていると、向こうの方からパトカーらしき車(軽トラだが)がやって来た。
すると店員がやってきて、せっせと椅子を道の脇に片づけ始めたのである。
流石に車道まで占拠する事は許されていないのだな・・・と思った刹那、再び店員が出てきて、椅子を下の場所に並べ始め、パトカーが通った30秒後には既に下のような状態にすっかり戻ってしまっていた。
ちなみに先ほどのパトカー以外にはほとんど車は通っていなかったので、まあ現実的といえば現実的と言えるかも知れない。
と言うことで、ベトナムの歩道(時には車道も)の存在意義について小一時間語らせて頂いた(巻き気味で語ったため少々尺が余ったかも知れないが)。
なおここまで突っ込みを入れておいて何だが、筆者個人としては歩道にお店を広げるベトナムスタイルは嫌いではない。
ベトナムと言う国の活気や温かい人間性、楽天的性向を表している様だし、見ようによっては何とも絵になる光景ではないか。
この光景が無くなってしまったら、ベトナムがベトナムで無くなってしまうような気さえするのだ。
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