旅コラム/旅道具

与那国〜台湾間の高速定期船構想浮上に旅心が鷲掴みにされている

こんばんは。10maxです。

旅好きとしてはモヤモヤしながら暮れゆく2020年、最後にビッグで嬉しいニュースが飛び込んできました。なんと、沖縄・与那国島〜台湾間の高速船による定期便を就航させる構想が検討されているようなのです。

元のニュース記事はこちらです。記事によると、2021年に実証実験を兼ねた運航を開始し、数年かけて法制度や設備面の実効性、需要面等の検証が行われるとのこと。

沖縄・与那国~台湾に高速船構想、コロナ後の観光期待 - 日本経済新聞
日本最西端の島、与那国島(沖縄県与那国町)で、台湾と行き来する高速船を就航する構想が動き出す。町は2021年度にも実証実験として高速船を運航し、5年後の定期航路化を目指している。台湾と与那国島はかつて同じ経済圏に属し、つながりが深い。与那国...

実はこの八重山諸島〜台湾間の航路については思い入れがあり、盛り上がる旅への衝動に打ち震え過ぎて頭髪が全て抜け落ちてしまいそうな程です!(植え直しましたのでご心配なく!)

という事で、与那国〜台湾航路がタビゴコロを如何に鷲掴みにするのかについてこの紙面にぶち撒ける事で震えと頭髪の抜けを収めたいと思います。

台湾 与那国 高速船Apple iPhone 6 (4.15mm, f/2.2, 1/30 sec, ISO125)

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かつて八重山−台湾の生活を支えた「台湾航路」があった

かつて、八重山諸島と台湾との間にフェリーの定期便が就航していた事をご存知でしょうか?

沖縄地方の海運業者である有村産業が運航していたこの定期船は通称「台湾航路」と呼ばれ、八重山−台湾間の食料や雑貨の移動の足として地域住民の日常生活を支えていました。考えてみれば八重山から見れば沖縄本島などよりも台湾の方がずっと近く、歴史を遡れば琉球王国の時代より、日本本土の文化や技術は台湾を通じて八重山に伝えられて来たとも言われるほど、台湾と八重山の交流は生活に根ざす重要なものだったそうです。

しかしその台湾航路も燃料の高騰などによる採算の悪化に耐えきれず、2008年にその歴史に幕を下ろしてしまったのです。筆者はその事を知った時には大いに涙で枕を濡らしたものです。

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台湾 与那国 定期便 高速船 復活

赤い点は与那国島。八重山諸島からは沖縄本島よりも台湾の方が近い。

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台湾航路には「空路以外の国境越え」というロマンがあった

なぜ台湾航路の廃止により筆者が涙を枕で濡らしたのか。あれ?枕で涙を?涙を枕が?まあいいや・・・。

それは、台湾航路に対して並々ならぬロマンを抱いていたためです。なぜか。

旅を愛する者にとって「国境越え」と言う言葉は特別な響きを持つのではないでしょうか。アジアやヨーロッパなどの大陸を旅していると、陸路での国境越えの機会がしばしばあります。マレー半島を縦断する鉄道でマレーシアからタイへ側と越えるパダンベサール駅や、タイとラオスの国境であるメコン川を渡る友好橋・・・どれも「ああ俺は今国境を越えている・・・」という、旅好き以外にはよく分からないであろう興奮に包まれます。

しかし、四方八方を海で囲まれた島国である日本においては、ほぼ全ての国境越えが「空路」なのです。機上の人となり映画を観たりさして美味くもない機内食を食べたり、あるいはヨダレを垂らして眠っている間に、いつの間にやら国境を越えている・・・しかも1万メートルも下の海の上のどこかで・・・。こと「国境越え」という観点で言えばロマンもヘッタクレもありません。まあ、離陸や着陸はそれはそれで別の感慨はありますけどね。

その様な中、伝説の「台湾航路」(勝手に伝説にしてしまった)は日本国民にとって大変貴重な「泥臭い」国境越えの手段を提供してくれていたのです。

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「空路じゃない」以外に台湾航路がタビゴコロをそそる理由

個人的な興味が入るかも知れませんが、こんな魅力を感じています。

台湾航路は「生活の足」=「観光のためじゃない」

いきなり個人的嗜好全開で恐縮なのですが、旅の中で訪れる場所として、あまり「観光地」や「名所」のように観光客ばかりが居るような場所よりも、生活感を感じられる場所が好きなんです。その辺の路地とか食堂とか・・・そういう意味では、琉球王国時代から台湾と八重山の生活物資の往来に使われてきた航路である、というのは魅力的ですね。現在でも石垣島や宮古島には台湾出身者が住んでおり、かつて利用していた台湾への定期便の復活を待ち望んでいると言われています。

もっとも、今回復活が検討されている経緯としてコロナ後の観光需要を取り込みたい、という意図があるようなので、ある程度観光路線となるのはやむを得ないでしょうね。

台湾と八重山には国境ならではの「カオス」がある

「国境ならではのカオス」って、とてもタビゴコロをそそります。国境付近には様々な文化が入り交じります。「今自分は一体どの国に居るんだっけ」と感じてしまうような事もしばしばです。

例えばかつて訪れた新疆ウイグル自治区のカシュガルでは、褐色の髪に褐色の瞳を持った人々がナンを食べてペルシャ絨毯を売って生活していました。国としては中華人民共和国に違いないのですが、人種や文化は明らかに中央アジアやペルシャ地方に近いのです。

また、ずっと以前から行きたくて行けていないのですが、ベトナム、ラオス、ミャンマーとの国境に囲まれた雲南省の奥地には30近い少数民族が暮らしており、やはり中国とは思えないごちゃまぜな光景が観られると言います(いつか絶対行きたい・・・)。

そんなカオスなちゃんぷる〜が、八重山と台湾にはあるのです。前述の通り、八重山と台湾の交流は沖縄本島とのそれよりも歴史が深く、またさらに与那国島となるとさらに台湾に近いため、石垣島の人でもディープな与那国の言葉は理解できないそうです。

ついでに言うと、八重山言葉ってマレーシアやインドネシアの言葉とも非常に多くの共通点があるんです。「チャンプル〜」がその最たるものですね。マレーシアやインドネシア辺りでも「ナシ・チャンプルー」てな具合で全く同じ意味で使われます。その辺りは話が逸れるのでこちらの記事で・・・

Days Malaysia Feb. 2019 -3- Pelita Nasi Kandarにてマレー語ちゃんぷる〜について考察する
Pelita Nasi Kandarは、滞在中実にお世話になった食堂です。ホテルから徒歩で3分ほどで、週末仕事の合間にちょいと気分転換を兼ねてホテルを出て昼食を摂るのに最適でした。「Nasi Kandar(ナシ・カンダール)」というのは、マ...

そんなカオスな言葉や文化が、そこが異国に近い場所であることを物語ってくるのが堪らないのです。

CASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600 (11.3mm, f/3.2, 1/60 sec, ISO0)
新疆ウイグル自治区、カシュガルにて

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現在も日本から国境越えが出来る定期船はある。でも・・・

参考までですが、八重山〜台湾だけが唯一の国境越えの航路ではありません。かつてよりは減ってしまいましたが、今でも以下の航路があります。

  • 釜山⇔博多・下関・大阪・対馬
  • 上海⇔大阪・神戸
  • ウラジオストク⇔境港
  • コルサコフ(樺太)⇔稚内

釜山航路は割とメジャーですよね。福岡からだと片道3時間くらい。お買い物やグルメ旅には良いかも知れません。ただ、金額的には往復で3万円以上かかるのでお手軽とは言えません。買い物やグルメ旅目的なら飛行機の方が早くて安くていいかも。

お次の上海航路は片道丸2日かかるので、もはや国境越えという範疇を越えています。豪華客船ツアーと言ったほうが近いかも(「豪華」は言いすぎかも知りませんが)。

この中で言うと最もタビゴコロをそそられるのはロシア航路でしょうか。ウラジオストクは御存知の通りシベリア鉄道の終着点。ここを起点に鉄道でユーラシア大陸を横断して欧州に・・・なんて考えるとロマンが湧いてきます。樺太も、宗谷岬から肉眼で見えるので、そこへ船で渡るというのは国境越え風情はかなり強いものがあるでしょう。個人的にはアジア好きなのでロシア航路にお世話になることは無いような気がしますが、ロシア方面が好きな方には飛行機でひとっ飛びとはまた違う旅情が味わえるのではないでしょうか。

という事で、アジア好きバックパッカー的にはどれも微妙な感じなのですがそれはあくまでも個人の嗜好なのでご参考にされて下さい。

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さいごに:いつの日か台湾に沈む夕日を眺めながら

こんなに熱く与那国〜台湾航路について語っておきながら、実は台湾には出張で一度上陸したことがあるのみで、プライベートでは行ったことが無いのです。しかしその出張で訪れた台湾が本当に魅力的で、屋台街のアジアならではの熱気、親切で人懐っこい人々、美味い料理とビール・・・欲しい物が全てここにある!と感じました。なのでぜひプライベートで再訪したい、と思っていたところにこのニュースでした。

もちろん台湾なんて空路でひとっ飛びすればすぐです。それはそれで良いかも知れない。でも、少しだけ何かが足りない。

こんな話があります。

与那国島から台湾までの距離はほんの111km。肉眼でも見えるはずの距離です。しかし話によると、様々な天候条件により与那国島から台湾が見えるのは年に数回ほどしか無いのだとか。しかも、見える時には巨大な大陸のように見えるそうです。そう言われたら、是が非でも見てやろうと思うわけです。

いつか与那国島から台湾を眺め、そして船で渡る、そんな旅が一つの目標になりそうです。そのために実証実験が成功する事を祈ってやみません。

台湾 与那国 八重山 高速船OLYMPUS E-M1MarkII (26mm, f/5, 1/1000 sec, ISO200)

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