こんにちは。ベトナム駐在生活が始まり間もなく3ヶ月になる10max(@10max)です。
筆者に遅れて家族がベトナムにやってきて1週間が経ちローカル飯屋での乾杯デビューを果たした翌日の8月21日、家族でホーチミン市内の統一会堂(Independence Palace)と戦争証跡博物館(War Remnants Museum)を訪れました。
動機は安直です。子供達に、せっかくこの国に住むのだからこの国の少しでも歴史に触れて貰いたい、あるいはベトナム戦争を知ることが「戦争というものは一体誰が何のためにやっているのか」という深淵なお題について考える一つのきっかけになれば、という事でした。
小中学生である子供達にはまだ理解するのは難しいかも知れません。いや何なら自分だって理解できるとは言い難い。ただ、少しでもその「アンニュイさ(≒違和感)」を感じ取ってくれれば、と期待した訳です。
※統一会堂見学の模様はこちらをご覧下さい↓
※本記事は2022年9月初回公開記事のリライト版です。
SONY ILCE-7C (34mm, f/3.2, 1/60 sec, ISO100)
ベトナム戦争証跡博物館
ベトナム戦争証跡博物館は、ホーチミン3区の官公庁街エリアにあります。
戦車や戦闘機、ミサイルや武器などはもちろん、当時の世界各国の世論を反映した報道の模様から枯葉剤の後遺症などの生々しい写真まで、戦争の事を考えさせられる幅広い内容の展示になっています。
実際に見てみると、想像以上に印象的でした。とにかく展示が生々しく、手加減を加えてこないのです。
ともあれ敷地に入ります。まずは当時の戦車や戦闘機が出迎えます。まあこちらはウォーミングアップといったところです。
SONY ILCE-7C (28mm, f/4, 1/200 sec, ISO100)
戦車や戦闘機は当時の傷を残しており、ただの飾り物ではないことを物語っています。
SONY ILCE-7C (42mm, f/3.2, 1/100 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C (28mm, f/5.6, 1/30 sec, ISO250)
空爆に使われたと思われる爆弾類が展示されていました。こんな大きな物体が空から落ちてきたと思うとゾッとします。しかも中には爆薬やらなんやらが大量に詰まっているのです。
SONY ILCE-7C (28mm, f/5.6, 1/30 sec, ISO250)
世界中の世論 – 誰も歓迎しない戦争
いよいよ展示室に入ります。本番はこれからです。
最初に目に飛び込んでくるのはこの「GIs FOR PEACE」の写真。米軍関係者が軍隊内で行ったベトナム戦争反対のデモの様子です。
SONY ILCE-7C (28mm, f/2.8, 1/30 sec, ISO500)
ベトナム戦争がベトナムのためのものでは無いことは当然として、米国の、さらに米軍の中でこのような反対運動が起こっていたという事実に、一体誰による誰のための戦争だったのか、というやり切れない想いが胸中に渦巻きます。それはベトナム戦争に限らず戦争という愚行一般に対するものでもあったように思います。
更に進むと日本における反対運動の記録が展示されていました。
SONY ILCE-7C (28mm, f/2.8, 1/30 sec, ISO125)
SONY ILCE-7C (37mm, f/3.2, 1/40 sec, ISO100)
「ベトナム侵略」という言葉に、強国達のパワーゲームの犠牲となったベトナムの人々の無念を思います。
その先にはヨーロッパ諸国における反対運動の記録。ほんの一部を除き世界中誰一人としてこの戦争を支持する人は居なかったのではないかと思います。それは昨今のロシアの狂気の指導者によるウクライナ侵略を思い起こさせます。
SONY ILCE-7C (28mm, f/2.8, 1/30 sec, ISO160)
生々しい展示に立ち尽くす
展示はいよいよ生々しさを増していきます。
戦火の犠牲になった人々の、何のオブラートにも包まれない生々しい状態の写真が展示されています。
SONY ILCE-7C (28mm, f/2.8, 1/30 sec, ISO400)
特に酷い思いにさせられたのは、枯葉剤の後遺症で奇形などの身体への影響を受けた人々や、結合双生児などの写真でした。モザイクなどもないありのままの姿に、想像はしていたものの、大きな衝撃を受けます。
正直なところこの博物館へ来る前は、子供達はすぐに飽きてしまうのでは・・・とも思っていたのですが、あまりのリアルな展示に少なからずショックを受けたのか、長い時間をかけて展示に見入っていました。
SONY ILCE-7C (67mm, f/4, 1/80 sec, ISO1600)
展示の中には、日本人写真家沢田教一氏による「安全への逃避」と題した、ピュリッツァー賞を受賞した写真がありました。「自国のため」という大義すら無い中で生死の淵を彷徨う母子の気持ちは計り知れません。しかし、「自国のため」という大義すら一部のプロパガンダによる暴走であった太平洋戦争を思い起こすと、大義の有無など関係なく戦争は悲惨なものだと思い直します。
SONY ILCE-7C (45mm, f/4, 1/50 sec, ISO500)
様々な国籍の人々が立ち止まってこの写真を見ていました。日本人は日本人なりの、そしてそれぞれの国の人々はそれぞれの戦争の歴史を思い返しながら、様々な思いを胸中を駆け巡らせるのでしょう。
SONY ILCE-7C (28mm, f/4, 1/30 sec, ISO640)
こちらは映画の主人公としても知られる戦場カメラマン、一ノ瀬泰造氏のカメラ。このカメラが銃弾から一ノ瀬氏の命を守ってくれました。
SONY ILCE-7C (35mm, f/4, 1/40 sec, ISO500)
そうした彼らの決死の覚悟により、後世の人々に戦争の悲惨さが語り伝えられます。
SONY ILCE-7C (28mm, f/2.8, 1/200 sec, ISO800)
さいごに
この日の感想を子供達に訊いてみました。すると中2の長男は
「そういうのは人に話すもんじゃないんだよ」
などとくっそ生意気な台詞を放ちました(笑)
まあ彼は生来口下手なのですが、気持ちは分かります。大人でさえベトナム戦争の事を安易に語ることは憚られるのに、ましてや思春期の彼にはこれほど口幅ったいテーマは無いでしょう。
このベトナムという異国の地において、この日子供達が見たことや感じたことが、彼らの心の小さな引き出しに仕舞われて、それがいつの日か小さな花を咲かせる糧になれば良いなと思います。
同日に統一会堂も訪れたので、そちらも別記事でご紹介します。
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