ベトナム生活編

間をすっ飛ばして昭和とZ世代が同居するベトナムのカオス

こんにちは。10max(@10max)です。

ベトナムに住んでいてちょいちょい感じるのは、

「超古いものと超新しいものが、間の色んなものをすっ飛ばして同居してるな」

という事です。

四輪車よりもバイク主流でメトロも無かったのに、ひとっ飛びにライドシェアサービスがどの国よりも普及したり、

経済指標的にはまだ途上国なのに、みんなスマホを持っていてアジアで一番のスタートアップ大国になっていたり、

ついこの間まで銀行口座すら殆ど普及してなかったのに、全部すっ飛ばして今では日本よりもよっぽどキャッシュレスが進んでいたり、

いわゆる「リープフロッグ」の権化みたいな国だなと思います。

で、同じようなことが、人々の価値観についても起きているんじゃあないかと思うんですよね。


ベトナムについてステレオタイプ的によく言われるのが

「50年前の日本」

というワード。

根拠は、現在のベトナムの一人当たりGDPがちょうど1970年代前半の日本のそれと同じくらい、という単純なものです。もちろん文化も歴史的経緯も全然違う両国なので、それほど単純ではありません。

しかし、「昭和的な価値観」を随所に感じるのも事実です。

その一つが、宴会や社員旅行の慣習。

観光バス, ベトナム

Apple iPhone 15 Pro (6.7649998656528mm, f/1.8, 1/60 sec, ISO250)
何をそんなに喋ることがあるのか延々とベトナム語で話している添乗員

社員旅行、昭和や平成前期の日本では「慰安旅行」とも称され、社員への福利厚生という位置づけとしてもかなり一般的でしたが、いまやとんと聞かなくなりました。筆者が新卒で社会人になった2000年代初頭、ちょうどその会社でも社員旅行が文字通り廃止されました(事業部の社員が旅行用に積立てを拠出する制度が、入社して間もなく廃止された)。

今の日本では、プライベートを尊重する風潮の中で、社員旅行の慣行はむしろ敬遠されていますよね。筆者自身も実は、上記の経緯によりちゃんとした「社員旅行」は経験したことがありません(仲の良いチームメンバーでの自発的な温泉旅行的なのはむしろ好ましいものとして経験しましたが)。陰キャで根暗の筆者としては大歓迎です。

一方今日のベトナムでは、殆どの企業がレクリエーションとしての「社員旅行」を企画し、大規模な「宴会」を催します。添乗員付きの観光バスでワイワイと出かけていく様は、まさに昭和。そして夜は、ステージのある大宴会場で、部署ごとの歌やダンスの出し物をしたり、本当にめんどうくs 大盛りあがりです。

ベトナムではこうした社員旅行や宴会は、それこそ社員の福利厚生として、催さなければ社員満足度を上げることが出来ない、というような風潮があります。この価値観も、まさに「慰安旅行」と称していた昭和の日本に重なるものを感じます。


ですが一方で、同時にZ世代の急速な台頭をも感じるベトナムなのです。

日本と同様、SNSの普及を背景に「個を尊重」する風潮がZ世代を中心に意識されるようになりました。ベトナムの企業でも「顧客、あるいは従業員としてのGen-Zとどう向き合うか」というのは主要な経営課題の一つとなりつつあります。

How Gen Z in Vietnam is using social media
(VOVWORLD) - There are currently more than 72 million social media users in Vietnam, equivalent to 73.7% of the total po...

そのようなベトナムのZ世代の若者たちは、上で触れたような昭和的な価値観とはやはり少し違う考え方を持っているようで、会社や親類との宴会を歓迎しない風潮を感じます。

下の記事を読んでも、「そうした飲み会に参加しないのは失礼で社交性が良くないと思われる」という風潮が昭和的ベトナムの価値観として存在するようですが、それに対して苦痛だと感じるベトナム人が増えつつあるようです。

Year-end parties: Time of joy or source of stress?
Welcome back to Words on the Street, where we take an in-depth look at the latest social fads in Vietnam.

ホーチミンのZ世代にはアルコールをあまり好まない層もおり、飲み屋ではなくカフェで夜遅くまで友人たちと語り合います。もちろんベトナムの若者の大多数がお酒を飲まないということでは無いのですが、特に都市部を中心にこうした新しい価値観を持つ人々が増えてきているのは事実です。

社員旅行に関しても、若手社員も社員旅行そのものを否定している訳では無いのですが、例えば筆者の会社でもちょいちょい企画側と若手社員の意見の食い違いが見られます。例えば「週末2泊3日は長すぎる」とか「団体行動ばかりで見たくもない宝石店や美味しくない団体向け料理ばかりでイマイチ」と言った感じで、若手社員の不満を耳にします。帰りのバイクの運転を気にせず飲める、というのは嬉しいらしいですが(笑)

夜部門受賞作品, VIETNAM NFT アートコンテスト2023SONY ILCE-7C (50mm, f/1.8, 1/50 sec, ISO250)

つまり、今のベトナムはかなりカオスな状況だな、と感じるのです。

ベトナム企業が社員リテインのために昭和的な社員旅行や宴会を企画する一方で、「週末は家族や友人と過ごしたい」というZ世代的な価値観を持つ一部の若い社員達。

飲み屋で怒号のような「モッハイバーヨー!!」を繰り返して杯を空けていくベトナム人が多数いる横で、おしゃれなカフェで静か(話し声は大きい)に語り合う都市部のZ世代。

日本ではこうした変化は、「平成」という緩やかな移行期間を経て、多重なグラデーションを描きながら移ろってきました。実際上で触れた通り、「社員旅行」という昭和的文化は、平成を経て消滅し、Z世代が社会に出る頃には(いや、もっと言えば生まれた頃には)完全に歴史上の遺物と化していました。

しかし今ベトナムでは、昭和的な社員旅行を推し進める40代社員と、個を尊重したいZ世代とが、日々同じオフィスで仕事をしているのです。

テト(旧正月)休暇は田舎に帰省し、親族一同が大集結して毎夜大宴会をするのが当たり前、という、「日本の昭和どころかいつの時代だよ!」ってくらい伝統的な考え方が未だに根強い(本当に根強い)中で、若者たちは「選択権が無いから仕方たく帰省するんだ」とこぼします。

日本で言う50年前の価値観と最新の価値感が、間を全部すっ飛ばして同時に現役として存在しているのが、今のベトナムなのです。

 

そう言えばこの記事を書いている今日、ホーチミン市初のメトロが開業しました。それもこの街の人々の行動や文化に何らかのカオスな影響を生み出しそうで楽しみです。

そんな塩梅で、なかなか面白い時代のベトナムに身を置いていることを実感します。

昼間から宴会するベトナム人男性達, ホーチミン

SONY ILCE-7C (113mm, f/4.5, 1/125 sec, ISO250)
昼間から宴会をするホーチミンの男たち。筆者は嫌いじゃない

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