こんにちは。最近寝る前に羊ではなく鹿を数えてしまう10max(@10max)です。
ついに出逢ってしまいました。「Hủ tiếu Sa tế nai」なる規格外の絶品麺に。
ゴロゴロの贅沢鹿肉にピリ辛特濃ピーナッツスープが絡む美味さも異色なら、この料理が生まれた歴史もまた謎に包まれた特級呪物。
この麺に憑りつかれた筆者は、週末2日連続で、ホーチミンの中華街チョロンのHủ tiếu Sa tế naiの老舗「Hủ tiếu Sa tế Gia truyền Tô Ký」に通ってしまいました。
覚悟の上、篤とご賞味あれ。
※ホーチミン市内のローカルグルメのまとめはこちら↓
※ベトナム風中華麺特集はこちら↓
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「Hủ tiếu Sa tế」なる濃厚ピリ辛ピーナッツスープ麺
事の始まりは、Twitter(X)でのツイ友さんの投稿でした。その投稿の1区のお店ではNai(鹿)こそ入っていませんでしたが、それをきっかけに「Hủ tiếu Sa tế」なる食べ物を知って、ひとまず1区のそのお店に行ってみたら、途端に「興味津々」の文字が群れを成して筆者に襲ってきました。
すっかり「sa tế」と言うピーナッツベースのスープ麺に興味が湧き過ぎて、どうやら震源地らしい中華街チョロンの老舗に来てみた🇻🇳
Hủ tíu sa tế nai🍜これは新境地。柔らか系フーティウに、少しだけピリ味ある濃厚サテスープ、そして柔らかくて癖のない鹿肉!!
病みつき🤤明日も来たいかも…🔥 https://t.co/4Xsoars8aX pic.twitter.com/29oTugkcYH
— 10max🇻🇳 | 旅と車とベトナム (@10max) May 11, 2024
まず、かつて無い圧倒的な味と食感。ピーナッツベースの濃厚ピリ辛スープが肉と麺に絡みまくり、あまりに斬新かつ中毒性のある味わいをもたらします。
この「Hủ tiếu Sa tế」(麺は他にもフォーや小麦麺などもある)なる麺料理、どうも震源地はホーチミンの中華街チョロンのようです。確かに圧倒的にチョロンエリアに集中して「Hủ tiếu Sa tế」の店があるのです。
しかし、興味を掻き立てたのは味だけではありませんでした。こんな突拍子もない謎料理、一体どこからこのサイゴンの街にやって来たんだろう?
マレーから大陸中華を旅してきた麺
病みつきになる味と同じくらい関心を引くこの麺のルーツを、朧ろ気ながら解き明かすのに何日も費やしました。
気になるのは「サテ」というワード。
ピーナッツベースで「サテ」と言えば、あいつですよ。マレーシアやインドネシアを代表する串焼き「Sate」。甘っ辛いピーナッツベースのソースに絡めて食べるマレー式焼き鳥です。
一方で、ベトナムにも「サテ」はあります。ベトナム版ラー油とも言われる調味料「Sa tế」。でもね、こっちはピーナッツベースではなく、甘みとも無縁で完全にラー油に近い。
さて、このベトナムの「Sa tế」と言う調味料(ダジャレじゃないよ)、実は中国由来で、広東や潮州辺りで「沙茶醤」と呼ばれるものだそう。
で、問題はこの「沙茶醤」。どうもマレーシアから中国に伝わったと言うのが一応定説のようなのですが、マレーシアの「サテ」を調べても、串焼きではなく調味料としての「沙茶醤」の情報が中々ヒットしないんです(ネットでちょっと調べた限り)。一体この「沙茶醤」はどこからどうやってやって来たんだ・・・。
さて、「サテ」のそんな疑問を(だからダジャレじゃn)抱きつつ調べているうちに、一つの重要な情報に行き当たりました。それは、福建省の厦門の名物麺と言われる「沙茶面」の存在!
こちらのサイトをご覧頂くともう一目瞭然、これこそベトナムのサテヌードルのルーツなのだろうと推察されます。そして、上の記事の中で更に興味深いのは、下の一節。
その昔、東南アジアに渡った華人・華僑が、サテを故郷の広東や福建に持ち帰ったのである。(中略)面白いのは、本来「沙茶=サテ=串焼き」という意味なのに、いつの間にか「沙茶」と言えば「サテソース」を指す意味合いが強くなっていることだ。ここで採り上げる沙茶麺も、正にそう。麺を串焼きにはできないので、サテソースをスープにした麺料理ということになる。華僑が持ち帰ったサテソースが中国の麺文化と融合して、新たな料理が生まれたのだ。
これだ!これなら完全に腑に落ちます。
つまり、ベトナムの「Hủ tiếu Sa tế」などのサテヌードルという料理は、南方マレーの串焼き「サテ」がソースに姿を変えて北の中国大陸に渡り、さらに麺の要素も加えて再び南下してサイゴンの地にやって来た、と言う仮説が成り立ちそうです。
これは面白い。もし本当なら、何とも旅好きな料理、気が合いそうじゃあありませんか。
HCMC中華街の絶品鹿肉推しの老舗「Hủ tiếu Sa tế Gia truyền Tô Ký」
そんなミステリアスな「Hủ tiếu Sa tế」に、ボリュームたっぷりの鹿肉をフィーチャーしたやばい料理「Hủ tiếu Sa tế nai」の老舗が、「Hủ tiếu Sa tế Gia truyền Tô Ký(蘇記)」です。
この「Tô Ký(蘇記)」という店名、親族で何店舗か運営している、80年以上の歴史を持つチョロンでも有名なサテヌードルの老舗群らしいのですが、その中でも「Hủ tiếu Sa tế Gia truyền Tô Ký(蘇記)」は特に鹿肉を推しているようです。
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アクセス
「Hủ tiếu Sa tế Gia truyền Tô Ký(蘇記)」は、ホーチミンの中華街チョロンの中でも5区の南西の端の方、6区との境目辺りにあります。
ちなみに数十メートル先に、「Tô Ký」の本店と思われる牛肉版のサテヌードルの店があるようです。筆者は今回鹿肉に興味があったので上のお店に行きました。その辺りの情報は下記のベトナム語のサイトにありました。
外観と店内
店頭にはベトナム語の「Sa tế」と広東語の「沙嗲(沙茶の元の漢字)」、そして「鹿/NAI」というキーワードが、夢に出て来そうなくらいにこれでもかと書かれています。
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老舗と言っても店内はコンパクト。至って普通のベトナム中華料理のお店。
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この辺りはチョロンの端の方で比較的閑静なエリアですが、人気店の様でデリバリーも多く訪れます。が、土日2日連続13時前くらいに訪れましたが、満席にはなりませんでした。
そんな事より、店のお姉様方のドーボー(パジャマ的な)の柄が芸術的すぎて目が釘付けです。
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食卓には例の調味料Sa tếを始め、定番のライムや唐辛子、潮州風の醤油などが置いてあります。
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メニュー – 鹿肉入りフーティウサテが鉄板
こちら↓がメニュー。至ってシンプルです。
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麺は南部米麺のHu Tieu一本。
そしてスープは2種類あるようです。下半分の「HU TIEU SA TE ~」というのが、この記事で取り上げている濃厚ピリ辛ピーナッツスープ。上半分は食べていませんが、恐らくよくある中華系汁麺のスープなのでしょう。
最後に具を選びます。
TAI:普通の鹿肉
VIEN:モチモチ鹿肉ボール
GAN:アキレス腱の様なちょっとコリッとした肉
あとはその組合せと、全部入りの「THAP CAM(ミックス)」。
「TAI, VIEN, GAN」と全部入りの違いは明確には分かりませんが、全部入りには、どれとも違いそうなゴロッとした肉や、センマイ(胃袋)?の様な具も入っていたので、その辺微妙に違うのかも。
なお、個人的お薦めは全部入りの「THAP CAM」です。贅沢な鹿肉ゴロゴロ感を圧倒的に楽しめます。
実食!柔らか鹿肉に濃厚スープが絡む幸せ – ちょっと「アレ」に似てる?
いよいよ着丼です。
ドーン!!
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見るからに濃厚なスープ・・・それが具や麺に絡みまくって、もう大変です。
なお、こちらは一押しの全部入り鹿肉サテフーティウ、「Hủ Tiếu Sa Tế Thập Cẩm」。
麺はベトナム中華によくある、フォーに近いタイプの柔らかい平面のフーティウです。
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こちら↓が鹿(Nai)のバラ肉(Tai)。Taiって、フォーではレア肉の意味で使われますが、このお店ではそうでもありません。ここでは火の通り加減と言うよりもバラ肉的な部位の意味で使われているのかも。
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また、鹿肉は脂身も少なく癖も全くなく柔らかく、三拍子そろった秀逸な肉です。日本ではあまり食べた記憶が無いのですが、まさかサイゴンの中華街でこんなにたらふく頂く事になるとは・・・
こちら↓は鹿のミートボールVien。これがモッチモチで大好物です。
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こちら↓は恐らくアキレス腱回りの肉「GAN」。ちょっとコリッとした食感が堪らん。
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上のGANとは違う感じの、普通の塊肉のようなのも入ってました。これも柔らかくて味が染みてて普通に鬼美味しい。
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その他に胃袋センマイのようなのも入っていました。歯ざわりがとても良き。
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こちら↓は、通常の鹿肉をひたすら楽しみたい方向けの「Hu Tieu Sa Te Tai」です。
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さてお味の方も、ルーツと同様単に「中華の麺料理」と一言では片づけられない奥深さがあります。
ラー油の様なピリ辛調味料Sa Tếを、ピーナッツでマイルドになるように煮込んだスープは、半分「ソース」とでも言いたくなる濃厚さ。それがあまりに斬新過ぎて最初は脳内処理が追い付かないのです。
ところが・・・不思議なことにですよ。食べているうちに何とも言えない懐かしさ、どこかで出会った感も湧き上がってくるのです。
そう、これ、完全に個人的な感想なんですが、
「カレーうどん」に似てる気がするんですよね。
この濃厚スープはまるでカレーのルーの様で、それにゴロゴロの肉と麺を絡めながら食べる感じは、まさにカレーうどん。
ピーナッツの風味があるので、マレーシアの「ラクサ」の方がより近いかも知れません。あれなんてまさにココナッツ風カレーうどんみたいなもんですからね(雑)。
卓上のSa Tếをひとさじ加えればピリ味が増して、カレー感は更に高まります。
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そして、注文すると出てくるこの付けダレ↓、謎に酸っぱいんです。「合わんだろう、何故君は酸っぱいんだ・・・」と最初思ったのですが・・・
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カレーに乗せるラッキョウ的なものだと思えば、急にしっくりきます。濃厚ピリ辛に、酸っぱいタレでさっぱり口直しと捉えれば、えらくマッチするのです。
完全に自分流に解釈してるだけなのですが・・・規格外過ぎて理解が追い付かなかった謎料理が、個人的にはこれで何となく腑に落ちました。他の方の感想も聞いてみたいところです。
この規格外料理、サテヌードルから攻めるか、鹿肉から攻めるか
ということで(どういうことだ)、とんでもなく斬新すぎて興味深過ぎて病みつき過ぎて、ここ数日頭の中はHủ tiếu Sa tếで一杯。一杯どころか、先週末から週明けの四日間で四杯もこの麺料理を食べてしまいました(職場近くの1区の店含め)。
そんな鹿肉サテヌードルの老舗「Hủ tiếu Sa tế Gia truyền Tô Ký」、何と奇遇にも、ホーチミングルメブロガーの大先輩でフードアナリストのちぇりさんも、かつてこの名店を取り上げられていました・・・!
本当に偶然で、筆者は「Hủ tiếu Sa tế」をキーワードにGoogleマップやベトナム語の記事などを調べてこの店に辿り着いたのですが、ちぇりさんは「鹿肉」を追い求めてこの店に行き当たったとの事。道は違えど食いしん坊の行きつく先は同じ、と言う事でしょうか(笑)
雑舌の筆者より何倍も分かりやすい食レポを書かれているので、ぜひちぇりさんの記事もご覧下さい。
それにしても麺大国ベトナム、まだまだ知らない麺料理があるようです。
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