今日は敦煌を出立してウルムチへ飛ぶ。食あたりの細君の具合も少しずつではあるが快方に向かっている。
昨日すったもんだの末14時までチェックアウトを遅らせる事が出来たため、12時半頃まで宿で療養し、ゆっくりと朝昼兼用の飯をとりに外へ出る(引き続き食当りのひどい細君は宿でパンのみ)。昨夜の名店「牛肉面(麺)」の店で、「涼黄面」という一品を頼んでみる。出て来たのは、冷やし中華のようなもの。なるほど、それで「涼黄面」。ナス、キュウリ、サヤインゲンなどの野菜を炒めたものと、唐辛子系のスープを絡めながら食べる。牛肉面ほどのインパクトはないが、なかなか美味い。
CASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600 (7.1mm, f/2.8, 1/10 sec, ISO0)
夜光杯のお値段
宿へ戻りがてら、西域の物産として有名だという「夜光杯」を物色する。「夜光杯」は祁連山で産出する良質の「玉(翡翠)」を光が透けるほど薄く磨いて作った杯のことであるようだ。
地球の歩き方に載っていた「敦煌市夜光杯廠」で、小型のワイングラスのような美しい夜光杯を発見したので、購入することにした。透明になるほどに磨いて作られた杯ではあるが、価格に関しては非常に不透明であり、当然ここでは壮絶な価格交渉が展開されることになる。
「これいくら?」
「160元だね」
「いやいや、80元だろう」
「130元でどうだ」
「いやいや、90元だろう」
「120元にしてやろう」
「いやいや、100元だろう」
という若干の問答の末、あっさりと100元にしてくれた。もっと安く言っても良かったろうか。いやいや、店の人が気前の良い人だったのだと信じよう。
CASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600 (7.1mm, f/2.8, 1/125 sec, ISO0)
中国式有料道路の通り方
何かとお世話になった「シルクロードホテル」に別れを告げてタクシーで空港へ。しかし、敦煌の最後の最後で、この女性運転手に再び驚愕の中国様式を見せつけられる事になった。
空港までの道は新しく舗装された直線の有料道路で非常に快適なのであるが、なんとこのドライバー女史、料金所(10元)の直前で突然対向車線を横断して柵の切れ目から反対側の農道に突入、砂煙をもうもうと上げながら猛進し始めたのである。
農道の脇で昼食を取っている農夫達の横を、パリ・ダカールラリーを走るパジェロのごとく、中国産の小型セダンが爆走する。しかも、農夫達もそれを当たり前のような顔で眺めている。
そして最後に圧倒的なクライマックスが待ち受けていた。なんと彼女は、再び元の有料道路に乗り上げた後、対向車線を空港方面に向かって逆走で攻め始めたのである。しかも、アグレッシブにも正面から向かってくる対向車にクラクションで威嚇まで行っているではないか。そして対向車も対向車で、予め予期していたようにスムーズに脇に避けていくのである。威嚇と言うよりも単なる注意喚起のような風情である。
つまりは、これはこの界隈では何も特別なことではなく一般的な行動様式として認知されているという事であろう。
聞くところによれば、空港道路で10元の通行料を徴収する事に対し市民が皆ボイコットをしているとのことのようである。しかしそのあまりにもワイルドなボイコットの方式に圧倒された一幕であった。
何はともあれ敦煌空港でウルムチ行きの便を待つこととする。
CASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600 (7.1mm, f/2.8, 1/15 sec, ISO0)
CASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600 (7.1mm, f/4.5, 1/800 sec, ISO0)
CASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600 (19.2mm, f/3.7, 1/125 sec, ISO0)
甘粛省敦煌市よりさらにウルムチへ向けて飛び立つと、窓外に冠雪した峰々が見えてきた。いよいよ天山山脈に抱かれる新疆ウイグルの地に近づきつつある事を実感する。
CASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600 (7.1mm, f/5, 1/800 sec, ISO0)
ウルムチ空港職員の顔立ちにウイグルを感じる
新疆ウイグル自治区の首府、ウルムチ空港に到着。
ここからカシュガル行きの便に乗り継ぐのだが、このフライトが2時間ほど遅れるという。この地方では規定のフライトスケジュールなど当てにならないとのこと。まあそんなものだろう。幸いウルムチ空港はかなり規模の大きな空港でカフェやレストランなどが多数あったため、ビアーを飲みながら時間をつぶす。
ところでこの空港に到着して間もなく、この地が中国の中でも異民族の地である事を実感する出来事があった。そうしたカフェやレストランのウエイトレスのお姉さんの顔立ちが、明らかにそれまでの漢民族のそれとは異なる彫りの深いペルシャ系もしくはトルコ系を想起させる顔立ちだったのである。
ついに我々は中国の中の中央アジア、新疆ウイグルの地にやって来たのだ。
CASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600 (9.2mm, f/4.7, 1/640 sec, ISO0)
CASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600 (7.1mm, f/2.8, 1/60 sec, ISO0)
風の谷のナウシカとフンザと新疆
ところで、カシュガル行きの便を待つ暇つぶしに地球の歩き方の地図を眺めていると、カシュガルからカラコルムハイウェイでパキスタンに入って程ないところに、「フンザ」という地名を発見した。「フンザ」と言えば、「風の谷のナウシカ」の「風の谷」のモデルになったという説のある町である。「フンザ」がパキスタンにある町だというのは知っていたが、カシュガルから程近いところにあるとは知らなかった。
そういえば、「風の谷のナウシカ」が中央アジアのイメージを多く取りいれているであろうことは想像に難くないが、今回改めて、中央アジアに程近い新疆地域のことをいろいろと調べる内に、思いのほか多くのことがこの作品に繋がっていることが分かった。
あくまでも筆者の想像であるが、例えば、タクラマカン砂漠の北のほとりに、「クチャ」という町があるが、これはどことなく、同作品に登場する「ケチャ」というマニ族の女の子の名前に似ている。また、タクラマカン砂漠の南のほとりには「チャルクリク」という町があるが、これは「チャルカ」というマニ族の僧侶、「チャルカ」に似ていないことはない。また、「マニ」といえば、チベット仏教の一派の名前に似ていなくもない。
さらに、風の谷のナウシカには、「タリム河」という河が登場するが、タクラマカン砂漠があるのはまさに「タリム盆地」の中であり、そこには実際に「タリム河」という河が存在する。そして、同作品の1シーンに、ナウシカがとある貧しい女性から「タリム河の石」をもらうシーンがあるが、新疆周辺が良質の玉(翡翠)を産出することで有名なことも、共通している。
その新疆地域の至近に「フンザ」が存在するのは、偶然なのだろうか。
※なお余談だが、上記の登場人物等の多くはアニメ版ナウシカには登場しない。アニメ版は原作(漫画全7巻)のごく序章に過ぎない。ぜひ原作を手に取って頂きたい。
Apple iPhone 12 Pro (4.2mm, f/1.6, 1/60 sec, ISO160)
英語の通じるホテルと新疆啤酒
23時40分ころカシュガルの町に到着。
到着時間がやたら遅いようだが、これはあくまでも北京時間。「西域」という名の通りカシュガルは北京から3000km以上西に位置するため、実際には日没からそれほど時間は経っていない。従って、タクシーで市内に入ると、夕食をとっている人々の姿も見える。なお、公式には北京時間が使われるのだが、新疆ウイグル自治区では自主的にマイナス2時間ずらした「ウイグル時間」を設けているという。
国際電話で予約してあったチニワクホテルは一応三ツ星なのだが、最近格上げしたばかりらしく、案内された280元の部屋は二ツ星レベル。そうは言ってもホットシャワーも出るし何ら問題はない。風呂好きの細君はバスタブが無いことに不満げだったが、昨年のラオス取材では一度もバスタブのある宿になど泊まらなかったことをもう忘れたのだろうか。敦煌で下手に良いホテルに泊まったことが良くなかったか。
それよりも喜ばしいのが、このホテルの従業員が皆英語が通じるということ。これはあくまでも筆者の推測だが、古来よりカシュガルの方が辺境であると同時に異民族間交流が活発であったため、自ずと共通言語という概念が浸透しやすかったのだろうか。
地ビールがあるかどうか心配だったが、ホテルで早速「新疆ビアー」を発見。カシュガルの地に杯をあげる。
CASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600 (7.1mm, f/2.8, 1/30 sec, ISO0)
(2006年9月13日)
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