こんにちは。10max(@10max)です。
今日はちょっと真面目な話をしてしまいます。瞼が落ちそうになったらメントスとコーラを混ぜて口の中に突っ込んでみて下さい。ファンキーが炸裂するはずです。
さて、今朝日経新聞にこんな記事が出ていました。
UberのCEO、ライドシェア「解禁されれば日本で参入」https://t.co/7dYoLZPIes
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) November 15, 2023
この中でUber社長はこんな風に言っています。
米配車アプリ大手ウーバーテクノロジーズのダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)は15日、一般ドライバーが有償で乗客を運ぶライドシェアの日本での展開について「(規制緩和で)認められれば当然参入する」と明言した。規制緩和後のサービス展開に意欲を示した。
出典:日経新聞
何とも嬉しい話じゃあありませんか。日本と言う市場が世界から取り残されている感覚がすっかり定着してしまった昨今、まだ日本市場に魅力を感じてくれるなんて。
ところが、ですよ。上でTwitter(現X)を引用したのは、そのリプライや引用リツイートを見て頂きたいからなのでちょっと見て頂ければと思いますが、まあまあ目を疑いました。
ライドシェアに対する(悪い意味での)先入観と、外資参入への拒否感の特盛り。
ライドシェアに対する偏見は一旦置いておきましょう。比較的新しい話ですし、「知らないって残念だな」というくらいの感想です。乗りたくない人は使わなければ良いだけの話なので、解禁しないと日本全体が損をするだけなのですが、個人的にはさほど困らないのでどっちでもいいです。
なお、ベトナムでGrab参入により大手タクシー会社が潰れかけて浄化・進化した件についてはこちらをご覧下さい。

気になったのは「外資参入への拒否感」の方ですね。ちょっと言葉をボカしますが、こんな感じ。
「まずは日本製サービスが先だ」
「ライドシェアまで外資に持って行かれるのはあり得ない」
「外資に稼がせるのはおかしい」
「外資の参入は不要」
これってもう、太古の昔に語り尽くされた話だと思っていたのですが、未だにこれだけ多くの人が「外資参入=悪」だと思っていることに驚きました。
ところで、「外資参入=悪」という思想の大元ってどの辺りにあるんでしょうか。完全に個人的な見解ですが、島国と言う地理的条件に加え、一つは江戸時代に大きなポイントがあったのかなと思っています。
現代の日本人の価値観の多くは、江戸時代の影響を受けていると感じます。「事なかれ主義」「連帯責任」などなど、300年も続いた一つの大時代の影響はそうそう簡単には日本人のDNAからは消え去りません。
ここで大事なのは、鎖国からの「黒船来襲」という流れ。300年も鎖国で眠っていた国に、突然バケツで水をぶっかけるほどの混乱を引き起こした大事件です。ここである種「外国人の襲来は何となく恐るべきものだ」という思想が日本人の中に根付いた側面はあると思います。
また近代においては、自動車や電化製品、鉄道など、高度経済成長を支えた多くのものを自国で作り出してきた、という自負も影響しているかも知れません。もちろん今でも、日本発で世界に通用する製品やサービスはありますが、しかしかつてに比べれば遥かに多くの海外発の製品やサービスに囲まれて生活しているという事実を認めたくない日本人は未だに多いのかも知れません。
SONY ILCE-7C (50mm, f/1.8, 1/50 sec, ISO320)
さて、ここで少し考えてみたいのは、そもそも「自国市場に外資企業が進出してくる」というのは、果たして良い事なのでしょうか?悪い事なのでしょうか?
筆者の考えは既にご想像の通り「良い事」です。ただし、国の根幹にかかわる資源や国防、セキュリティなどの保護に十分配慮した上で、です。
筆者の考え方を説明するために、ここで少し見方を変えてみます。
筆者は現在、日系企業のベトナム子会社に出向しています。つまり、ベトナム側の視点に立てば、「外資として自国市場参入して来た側」にいます。筆者は黒船です。ガオー。
こうした日系企業による活動は、ベトナムにとってどのような波及効果があるでしょう?
ものすごく簡単に、自負を込めて言うなれば、ベトナムの人々の暮らしがより便利で豊かになっています。
筆者が勤務している、ホーチミン市に拠点を置く会社はいわゆるスタートアップ企業と言うやつで、テクノロジーによって人々の生活を便利なものに変えるのがミッションです。その会社に対して、筆者の出向元の日系企業が少なからぬ出資をしている、つまり、このスタートアップ企業が活動するための資金を、日系企業が提供しているという構図です。
当然ながら民間企業としては、儲からないビジネスに投資するわけにはいきません。何億、何十億、場合によっては何千億円というお金を投じるわけですから、軽々と判断するわけには行きません。
しかし見方を変えれば、日本企業がベトナムと言う国に「多大なリスクを負って投資」して、ベトナム社会経済の発展に貢献している訳です。
これは勿論スタートアップ企業に限りません。製造業や金融、小売、飲食など、あらゆる分野で同じことが言えます。ベトナムの都市部では日本以上にキャッシュレス決済が普及していますし、ユニクロベトナムでは今年の7月から日本と同じ無人レジが導入されました。人々はAEONモールや高島屋で快適に買い物を楽しんでいます。
一方で、ベトナムに投資したものの上手く行かずに撤退の憂き目を見た外資企業も数知れません。
「外資系企業がある国に参入してくる」というのは、そういう事なのです。投資のリスクを負わずにUberのサービスを日本で普及させることは出来ません。
そうして新しいサービスや製品がベトナム人に受け入れられ、お金を払うようになることで、新たな市場が生まれます。そうした市場が生まれれば、当然ベトナム国内企業もそうした新しい市場に参入し始めるので、ベトナムの経済は更に大きくなっていきます。当然ながらそこには雇用も創出されます。
外資企業を追うように、地場のスタートアップが新しいデジタルサービスを雨後の筍のごとくリリースし、VINFASTは今や世界を股に掛けるEVメーカーです。
雇用と言えば、今ベトナムで最も給与水準の高いのフィンテックエンジニアはどんな企業に勤めていると思いますか?外資系フィンテック?いいえ、その最右翼は、ベトナム国有銀行です。海外から輸入した技術やそれを身に付けた人材が、確実に国内に移転しています。
「外資系企業がある国に参入してくる」というのは、そういう事なのです。外資を拒否して国産のサービスや製品だけに偏重するのは、新たな市場や雇用が生まれるチャンスを自ら拒否し、縮小均衡に向かうようなものなのです。
ところで、今筆者は「ベトナム」というアジアの成長市場を例にとりました。ベトナムやインドネシアと言った国はASEANの中でも特に魅力的な市場なので、外資規制などの参入障壁が多少高くても、何とか方法を模索して外資企業が投資の機会を窺うほどです。ベトナムの人口は先日、ついに1億人を突破しました。
では日本はどうでしょう。減少の一途を辿る人口は2050年頃には1億人を割ると言われ、英語も通じなければデフレスパイラルで安いものしか売れない。
「外資より国産だ」などとふんぞり返っている場合でしょうか。今に誰も見向きもしてくれなくなるのではないでしょうか。
そんな折のUber社長の日本参入への意欲表明は、光明でしかない、と思うのですが、いかがでしょうね?
※念のためですが、「日本には良いところがない」という話をしているのではなく「外資企業にとっての参入市場としての魅力」の話です。

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