こんにちは。ベトナムでGrab&タクシー通勤生活になって色々な車に乗るのが楽しみな10max(@10max)です。
未だにGrabやUberなどの配車(ライドシェア)アプリ/サービスが解禁されていない日本からは、「アジアは便利な配車サービスがあっていいなあ」と思われているかも知れませんが、本記事は、単に「Grab便利だぜ!」といったお話に留まらず、「アジア各国の中でもベトナムのモビリティ事情が3倍くらい便利っぽい!」と言うお話です(赤い車が多いとか3倍速いとかではなく)。
ベトナム以外の国には旅行や出張でしか行ったことが無いので知識や経験に偏りはあると思いますが、ご容赦下さいm(_ _)m
ベトナムのタクシー事情はここ数年で激変
数年前のベトナムはぼったくりタクシー天国だった
2010年頃より仕事でベトナムと関わるようになり、出張時にはタクシーを利用していました。
しかし、数年前まではベトナムもアジアの御多分に洩れずぼったくりタクシーが多く、利用時は気が休まりませんでした・・・
アジア全般あるあるで、まずメーター制かどうかを確認し、メーターがスタートするかどうかを目視し、その後も不自然なルートを通っていないか等など・・・そこまで注意を払ったとしても結局妥当な料金だったのかどうかは中々分かりません。
スマホの普及に伴うGrabの躍進
そこに救世主として現れたのが配車(ライドシェア)サービスです。2014年にベトナムに進出したGrabはその後、ほぼ同時期にベトナムに進出していたUberを買収してベトナムにおける配車サービスのトップの地位を確立しました。
しかし進出当初は中々既存の大手タクシー会社の地位を脅かすには至りませんでした。
転機ははやはりスマホの普及でしょうね。ここ数年のベトナムでのスマホの普及は凄まじく、2017年前後に50%を超え、今や都市部ではスマホを持っていない人を見つけるのが難しいくらい。高度経済成長真っ只中の彼らにとってはローンで高額なものを買う事に抵抗がなく、道端でバイクの上で寝ているようなおっさんでも皆スマホを手にしています。
また平均年齢の低いベトナムにはデジタルを使いこなす層が多く、新しいサービスへの関心が非常に高いというのも普及の後押しとなったはずです。
加えて、低価格のGrabバイクが取りわけベトナム市場にマッチしたと言うのもありそうです。もしかするとベトナム人にとってはGrabバイクをフックにGrabアプリをインストールした人が結構多いのかも。
その後デリバリーサービスなどを取り入れてスーパーアプリのお手本のようになったのはご承知の通り。
ということで、ベトナムでは2010年後半に急激にGrabが普及しました。
Grabによる突き上げでタクシー大手もレベルアップ
Grab躍進により従来のタクシー会社は大打撃を受けました。下記記事によると、2010年から2018年の間に国内のタクシー会社は36社から16社に、車両台数は12,654台から8,500台に減少し、大手のビナサンタクシーでは過半に当たる約1万人の人員削減を行なったとか。
こうした状況に危機感を抱いた大手タクシー会社では、対抗すべく自社アプリ開発やサービス品質向上、組織改革を進めたと言われており、ユーザーとしても実際かなり改善を実感しています。ビナサンやマイリンに乗る限りボッタクリに遭う事はまず無くなりましたし、使い勝手も非常に良くなり、場合によってはGrabよりも積極的にそれらを使うケースも増えてきたほどです。
なお、ビナサンやマイリンなど一部の大手タクシー会社を除いては、今でもぼったくりタクシー自体は存在しますのでご注意ください。
ベトナムのタクシー、配車サービスはアジア屈指の便利さ
こうした事情を背景に、ベトナムでは(タイやマレーシアなどと比べても)格段にタクシーや配車サービスが利用し易い状況になっていると感じます。
Grabは当然安心・便利かつ捕まえやすい
Grabは当然ながら便利です。
行先を伝える手間が不要、支払いもアプリ内で完結(≒ぼったくりも発生しにくい)、日常的に使う場合には自宅や職場、よく行く場所を登録しておけば一発で行き先に指定可能。更に、例えば朝アプリを開くと自動的に「職場」を、夕方開くと「自宅」を一番上に表示してくれるというインテリジェントさ。
こうしたアプリの優れたUI/UXや、それが頻繁にアップデートされるところがタクシーとの一番の差異化ポイントでしょう。
また、ドライバーの評価やフィードバックの仕組みも整っており、質の低いドライバーは自然と淘汰されるため、乗客から良い評価を得ようというインセンティブが働きます。ヤフオクやメルカリと似たような感じですね。
安全性に関する配慮もきめ細かく、乗車中トラブルがあればすぐにサポートセンターにホットラインで電話出来たり、GPSで異常な動きがあったりすると↓の様に自動検知してサポートを促してくれます(これはただ渋滞が酷かっただけなのですが・・・)。
まあそんなトラブルに遭遇したことは無いので実効性は確認出来ていませんが、それ自体が非常に良い事です。
更に素晴らしいのは、降車後もドライバーと連絡が取れる機能。車内に忘れ物をした際などに役に立ちます。実際に職場の同僚がトランクにスーツケースを忘れてしまった事があるのですが(そのネタだけで1記事起こせそうですが)、この機能のおかげで無事に戻って来ました。
また、これは感覚的な話になってしまいますが、ベトナムでは他の東南アジアの国に比べると比較的すぐにGrabが捕まえられる印象があります。タイやマレーシアなどと比べると、ドライバーを見つけて到着するまでのリードタイムが短い感じ。特にGrabバイクを含めると圧倒的です。
また、これまでダナンやフエ、フーコック島、ファンティエット、ムイネーなどの地方都市にも行きましたが、ほぼ困ることなくGrabが利用できました。
国別の登録台数(対人口)などの定量的な比較データはありませんが、ベトナムにはメトロなどの公共交通機関が無い事や、さらにバイクの台数が異常に多い事も関係しているかも知れません。
大手タクシーが負けずに便利
このようなイケイケなGrabの状況を追いかけて、大手タクシー会社のビナサンやマイリンの利便性もグングン上がっています。当然ながら両社とも公式の配車アプリを提供しています。
また、クレジットカード支払いも以前より格段に受け付けてくれるケースが増えましたし、特にベトナム在住者については、QRコードでのスマホ決済も出来るようになりました。ビナサンタクシーではこのような↓ドライバー専用アプリがあり、ユーザー側の銀行アプリで読み取ることで即支払いが行えます。
これで紙幣の数え間違いやお釣り関係で気をもむ必要が無くなり、利用の精神的な障壁が格段に下がりました。
乗車拒否・料金交渉はほぼ皆無
そしてベトナムのタクシーが素晴らしいのは、Grabが捕まえやすいことに加え、タクシーについても行き先による乗車拒否や料金交渉がまず無い事です(ビナサン、マイリン等大手を利用した場合の話)。
例えばバンコクでは、例え「TAXI METER」と書いてあっても外国人と見るとすぐ交渉を吹っ掛けてきたり、乗車拒否に関してはバンコクだけでなく香港でも頻繁に遭う始末で、そもそもタクシーに乗る事自体が中々難しいという有様(いずれも2023年時点)。Grabについても、バンコクでは少し遠い目的地だと全く車が見つからず難儀しました。
しかし、ベトナムではその様な面倒な状況には、これまで1年3か月ホーチミンに住んでいて(しかもほぼ毎日利用していて)殆ど遭遇した事はありません(車が見つかるまで少し時間がかかる程度)。先日などはビンズンという、ホーチミン市街から片道2時間程度(!)の郊外にGrabで行きましたが、往復共にすぐに捕まえる事が出来、勿論ノートラブルでした。ここは神の国なのでしょうか。
※ただしタンソンニャット国際空港の国内線到着ターミナルなど、特殊要因により捕まえるのにコツがいる場所はあります(あそこは国際線到着ターミナルに行くのが吉)。
ビジネス・法人利用も簡単
詳細は省きますが、仕事での利用・経費精算も非常に簡単に行う事が出来ます。Grabでは支払いプロファイルを複数設定出来たり、会社への直接請求を選択する事も出来ます。
自分で支払った分については、PCでアカウントにログインする事で、例えば特定期間の業務利用分だけの利用金額をまとめて表示してPDFにする事が出来るので、立替経費精算時に便利です。
またビナサンやマイリンも、法人利用のためのカード発行などをしているので、いちいち立替払いをしてレシートを会社に提出して、と言った手間が省けます。
そもそもベトナムの治安自体が良い
これが結構重要ですが、現状は最低限の注意さえ怠らなければ、タクシーやGrabで深刻な犯罪に巻き込まれるリスクは低いです。
アジアの中でもベトナムの治安はかなり良いと感じます。エリアや時間帯によっては軽い犯罪やトラブルに巻き込まれることはありますが、それでもスリや引ったくり程度。凶悪犯罪は比較的少ないです。傷害などのニュースも稀に見かけますが、大概は痴話喧嘩やカラオケでのトラブルが元だったりして、「平和だな・・・」と感じます。
例えばクアラルンプールでは貧困国からの出稼ぎ労働者の増加等で、女性の一人歩きが難しいエリアがあるほどですが、ベトナムではそこまで神経質になる必要はありません。あくまでも筆者宅の場合ですが、中学生(今年3年)の長男は一人でGrabに乗って近くのショッピングモールなどに遊びに出掛けています(一応明るい時間帯に限り、2歳下の次男については親が同乗してます)。
TPOで積極的にタクシーを利用したいベトナム
このような塩梅でGrabとタクシーが切磋琢磨してモビリティサービスが進化しつつあるベトナムでは、TPOによっては、一般的により便利と言われるGrabよりも、むしろ積極的に従来型のタクシーを利用したいと思える場面や理由があります。
上で触れた、キャッシュレス決済が使いやすくなった点に加えて、以下のような事が挙げられます。
到着まで待たなくてよい
当たり前ですが、Grabだと配車アプリでリクエストを送信し、ドライバーがそれをアクセプトし、ピックアップ地点まで車が来るまで待たなくてはなりません。比較的Grabを捕まえやすいベトナムとは言え、場所やタイミングによっては出発するまで5分前後かかります。
一方タクシーであれば、見つけさえすればすぐに出発する事が出来るのでタイムロスが少なくて済みます。
例えば都心で5~10分程度の移動なのに、車が来るまで5分も待つのは効率が悪い感じがしますし、急いでいる場合はなおさらです。そうした場合には、サッとタクシーに乗ってしまうのが吉でしょう。
特に都心ではビナサンやマイリンは沢山走っているので、Grabを呼ぶよりは早く乗れる確率が高いです。
車両状態や運転スキルの平均点が高い
Grabはやはりプロの社員ドライバーという訳ではなく、また車両も個人の管理に任されているので、平均して安心できるのは大手タクシー会社だと思われます。
もちろんGrabでも運転の上手い人や新しく快適な車である場合もありますが、一方で「お前この車ちゃんと車検通しとるんか」というのが来ることもあり、平均点では大手タクシー会社に軍配が上がります。
住所だけでほぼ確実に目的地に着く
日本のタクシーとちょっと感覚が違うのが、目的地の住所を伝えるだけで殆どの場合ちゃんと到着できるという点。なので、日本のタクシーのように細かく指示しなくても、Googleマップで住所の方(地図よりも)を見せるだけでほぼ苦労せず辿り着けます。
これ最初、ベトナムの七不思議の一つだろうと思ったのですが、理由の一つがベトナムの住所体系で、「通り名+番地」という非常にシンプルな構成であるため、通り名さえ知っていれば場所が特定できるのです。まあそれでも、ドライバーが細かい通り名を覚えている事自体が奇跡的だと思うのですが、実際結構マイナーな場所でも割と「OK、OK」なんつってすんなり行ってくれるんですよね(ベトナム人やインド人の「No Problem」は「問題が起こっても問題ない」を意味しますが、この場合は割と本当に大丈夫)。
もちろん同じような通り名があって、違う場所に向かわれた事も稀にあったので、初めての場所に行く際にはある程度Googleマップで現在地を確認した方が安全です。
ベトナムのお薦めタクシー会社とトラブル回避Tips
おすすめは圧倒的にビナサンとマイリン
ホーチミンにおいてGrab以外を利用する場合は、上でも何度も登場したビナサン(Vinasun)とマイリン(MaiLinh)、この2社だけ覚えておけば完璧です。
ビナサン(Vinasun)タクシーの特徴と車種
ビナサンタクシーの車両は下の写真の様な、白地に赤と緑のロゴ・文字が入ったデザイン。車両デザインに加え、車体に書かれた電話番号(27 27 27)や、ドライバーの制服(白い半袖シャツにVinasunのロゴ、緑のライン)辺りをチェックしましょう。
ビナサンの車種の殆どは上の写真のトヨタのBセグセダンVIOSか、3列ミニバンのINNOVAで、これらはビナサンの中では「Standard Taxi」に位置付けられます。
また、稀にSUVのFORTUNERが居たりします。こちらはビナサンの中で「Premium Taxi」に位置付けられているので、料金はもしかしたら若干高いのかも。でも、個人的にはレアなFORTUNERに当たると一日気分がよいです(笑)
あと、最近ちょくちょく見かけるのが、赤い小型のビナサンタクシー。車種はトヨタのWigoで、ダイハツが生産を担うシャア専用・・・じゃない、ベトナム専用Aセグコンパクトハッチです。こちらは「Economy Taxi」とカテゴライズされているので、恐らく料金が若干安いんじゃないかな。なお、クラスによって料金に差異があるかについてはいずれも未確認です。
マイリン(Mai Linh)タクシーの特徴と車種
お次にマイリンタクシー。マイリンは全身緑の車両です。チェックポイントはビナサンと同様。マイリンのドライバーは緑のネクタイをしていますね。
車種もビナサンと同様、トヨタのINNOVAかVIOSです。マイリンのFORTUNERは見たことないなあ。
Apple iPhone 12 Pro (6mm, f/2, 1/440 sec, ISO25)
なお、ホーチミン以外のハノイやダナンなどについては筆者は出張程度でしか行かないので、あまり詳しい情報は持っていません。MaiLinhはハノイでも結構走っていますが、Vinasunはあまり見ないですね。
ハノイではマイリンに加え、「Taxi Group」や「ABC Taxi」などがお勧めの様です。お手数ですがGoogleで検索いただければと思います。
ベトナムのGrab・タクシートラブル回避の鉄則
ベトナムでタクシー関連トラブル回避のための鉄則は非常に単純で、以下の3点に尽きます。
- とにかく不自然な客引きや交渉を無視すること
- Grab、ビナサン、マイリン(及び各都市の安全と言われる大手タクシー会社)以外は使わないこと
- 財布は絶対にドライバーに渡さない
これだけGrabと大手タクシーがスムーズに使えるベトナムでは、普通にタクシーを捕まえて乗る、あるいはGrabアプリの指示に従って乗る、という基本的な動作以外の勧誘や交渉は、基本的に何らかのぼったくりと考えて間違いありません。
もっとも、いくつかの例外ケースはあります。
まず、空港周りで利用する場合に、運賃とは別に1万ドン程度(約50円)を要求される場合がありますが、これは空港のゲートの通行料なので払ってあげましょう。
ただしGrabの場合は料金に含まれている事が多いです。Grabでの空港使用料については下記記事を御覧下さい。
また、少し変わったケースで、フーコック島で2回ほど経験したのは、Grabを呼んだらアプリ表示とは違うナンバーの車だったケース。一瞬激しく警戒しましたが、そのドライバーのスマホアプリには間違いなくこちらの名前と行き先が表示されていたので、流石にそんなチートは有り得ないだろうと思い乗ってみたら、やはり問題ありませんでした。何らかの事情で車のナンバーが変わっていたようです。
逆にそうではなく、アプリの確認もさせずに「OK、Grabドライバー、マイフレンド、チェンジ、ノープロブレム」などと言って近寄ってくる輩はプロブレムの塊なので完全無視です。
空港や旅行者の集まるエリアは特に要注意
また、利用エリアによっては特に注意すべき場所があります。それは、タンソンニャット国際空港やノイバイ国際空港、安宿街(ホーチミンならブイビエン通りやレタントン通り、ハノイなら旧市街界隈)などの、外国人旅行者が多く利用するエリアでタクシーやGrabを捕まえる場合。
そうしたエリアで客待ちしているドライバーは、最初からボッタクリを狙っているケースも少なくないので、上で挙げたような怪しい言動がないかどうか、特に神経を尖らせるのが吉でしょう。
まとめ:Grab&タクシー二刀流で移動に困らないベトナム
以上の通り「Grab×ビナサン×マイリン(+各都市の大手安全タクシー)」から選べるベトナムのモビリティ事情は、アジアの他の国々と比べても3倍くらい便利で安全という訳です。
実はベトナムに赴任して間もなく社用車通勤をやめてGrab&タクシー通勤に切り替えたのは、こうしたベトナムのモビリティサービスの便利さや安全性に気付いたのが背景として大きく、コスト削減はその結果でした。こうした環境が整ったのはここ数年の事であり、筆者の前任者の時代には社用車無しでは考えられなかったはずです。
根っこには、筆者自身元々アジアフェチで、こうした市中サービスをガンガン利用してベトナムのマーケットをより深く知りたい、というのがあり、モビリティに関してはそれが出来る環境がちょうど赴任のタイミングで整っていたのは幸運でした。もっと本音を言うと、車好きが高じて色々な車種に乗ってみたかった
しかし何だかこう、ここまでベトナムのモビリティサービスが便利だと、メトロなんてもう要らないんじゃ・・・などと妄想したりもします。
従来、地下鉄などの都市鉄道が先進国の象徴の一つとされ、バンコクやクアラルンプールもその流れを辿りましたが、ベトナムでは順番が逆転し、メトロ整備が一向に進まない中、先にスマホとライドシェアサービスの方が急速に普及しました。
KLやバンコクのメトロ網は目を見張るものがあり、ベトナムのインフラがそれらに追いつくには、短く見積もってもあと30年はかかるだろうな・・・というのが素人ながら率直な感想です。
渋滞など様々な課題はあるものの、「スマホ+ライドシェア+バイク」の合わせ技で、これまでの「メトロありき」とは違う世界線を歩むことも、奇跡の国☆ベトナムならあり得たりするのかも・・・?なんて思ったりしてます。
以上、少し長くなりましたが、ベトナムのタクシー、配車サービス事情についてご参考になれば幸いです。
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