こんにちは。ホーチミン生活ももうすぐ2年半になろうという10max(@10max)です。
さて、今年6月に起きた、ホーチミン市内でのベトナム人による日本人刺殺事件は、ベトナム在住日本人を中心に大きな波紋を呼びました。
実はこの事件からずっと、本記事を下書きフォルダーで温め続けていたのですが、今回中国・深センでの痛ましい事件を受けて、再度この記事を引っ張り出そうという気になりました。
ベトナムと中国では色々な点が異なりますが、しかし、中国で起きている事がベトナムの未来に示唆するところも、やはり少なくないのだろうと感じるのです。
本記事では、ベトナムの治安の現在と未来の妄想、そして最後に犯罪被害に巻き込まれないためのコツを綴ります。
なお、当然ながら筆者はベトナムやベトナム人の事をほんの一部しか知りませんし、完全に個人的な経験と偏見にまみれたどうしようもない駄文なので、異論もあろうかと思いますが、どうぞ難しいツッコミはご勘弁下さい。
SONY ILCE-7M2 (50mm, f/1.8, 1/60 sec, ISO250)
ベトナムの治安の現在地
今は治安も対日感情も良いベトナム
まず雑に言いますが、ベトナムは治安の良い国です。
少なくとも、日本人が旅行や駐在などで滞在する場合には、現状、ベトナムはアジアでも非常に治安の良い国の一つだと言えます。もちろん観光客が密集する歓楽街や空港周辺では窃盗や詐欺などの事案はありますが、ある程度旅慣れた人や、まして住んでしまうとなれば、相対的に非常に安全な国です。
例えば後進国からの出稼ぎ労働者の多いクアラルンプールには女性や子供が一人で歩いてはならないエリアがありますが、ベトナムにはその様な場所はほとんどありません。もちろん、一部低所得者エリアの夜間の裏路地の独り歩きは気をつけるべし、と言われていますが、そんなのはどの国だって同じです。
なお、これも当たり前ですが、窃盗や詐欺、賭博被害は他のアジア各国同様、最低限の心がけが無いと普通に遭遇し得ます。空港やベンタイン市場、ブイビエン辺りの旅行者密集エリアで「財布をスられた!」「ぼったくりタクシーに遭った!」的な事案を挙げて「どこが治安がいいんだ!」と言うツッコミをされたい方は、まず落ち着いてフォーを飲みながらサイゴンビアを食べましょう(←お前が落ち着け)。
これらのトラブルを避ける心がけについては、一応最後に触れておきますね。
また、対日感情も良好です。
これは、歴史は認識しつつも過去を過剰に引きずらず、現在や未来により強い関心を置くベトナムの気風やバランス外交方針によるものでしょうか。あるいは、過去の戦争にいずれも勝利した、という点も関係あるのかも知れません。
これは、歴史を恣意的に切り取り対外感情を政治に利用する一部の東アジアの国々とは対照的です。もちろんベトナム人も忘れているわけではなく、政治に利用して国民を煽って現在に悪い影響を及ぼす事を好まない、あるいは表立って言わない、というだけで、デリケートな話題である事には変わりありません。
なお、その意味では中国に関しては現在進行形で領土問題が存在するため、ベトナムにも現在進行形の反中感情が存在すると言われます。
重大犯罪の少ないベトナム
犯罪の内訳について少しだけ調べてみたところ、古い情報しか無かったのですが、下のホーチミン市内における2010年の邦人の犯罪被害内訳によると、やはり殺人や誘拐、強盗・強姦、テロなどの重大なものはほぼゼロで、殆どが窃盗や詐欺被害です。
また、2024年7月に在ホーチミン日本総領事館からアナウンスされた邦人被害の犯罪状況(↓)でも、主な犯罪傾向は窃盗が主なので、上の状況は今も変わっていないようですし、在住者の感覚とも合っています。
〈邦人の犯罪被害傾向について〉
1 航空機内での窃盗被害
航空機内の頭上の収納棚に入れた手荷物より現金及びクレジットカードが盗まれ、ベトナム国内で多額の不正使用をされた。2 日本人街での窃盗(スリ)被害
夜間、ホーチミン市内の日本人街を歩いていたところ、見知らぬベトナム人から話し掛けられ、その際、新聞紙で手荷物を覆われ、下から財布等の貴重品を盗まれた。3 バイク走行中の窃盗被害
バイクを利用して出勤途中、何者かに、背負っていたリュックのポケット部をカッター様の刃物で切り裂かれ、在中していたスマートフォンを盗まれた。
窃盗や詐欺被害が発生するというのは治安が悪いということではないか、と思われるかも知れませんが、上で触れた一部の観光客密集エリア以外では殆ど発生しないため、そうしたエリアに近づかない在住者がそうした被害に合うケースは、ゼロとは言いませんが、割と稀です。
短絡的で直情的な傾向のあるベトナム人
さて、ベトナムは日本人にとっては治安がよい国である一方、ベトナムで犯罪そのものが少ないかと言うとそういう訳でもありません。
こちらに住んでいるとむしろ、「そんなに簡単に人を殴り殺しちゃう?」と思わざるを得ないようなニュースが日常茶飯事です。
ベトナムでは計画的な凶悪犯罪はあまり聞きませんが、報じられる死傷事件の多くが、男女の怨恨絡みだったりカラオケの騒音絡みだったりと言った単純なものです。つまり、ちょっとした喧嘩や私情のもつれですぐにカッとなってしまい、相手にガソリンをぶっかけたりその辺の鈍器で殴ったりして殺傷してしまう傾向があります。
また、詐欺や強盗のやり口についても、後先を考えないと言うか、勢いというか、「そんなんバレるやろ」という稚拙なものが多い印象。
その意味では、「秋葉原の無差別通り魔事件」のような「心の闇を背景とした計画的な凶悪犯罪はあまりない」という点ではある意味平和だとも言えるのですが、感情が不安定になった瞬間にすぐに手が出てしまうという危険性も感じます。
ベトナム人との関わり方によって変わる感情行動(仮説)
このようにベトナム人は、高等教育を受けて企業でマネジメントをしている様な層を除くと、喜怒哀楽の起伏が激しく、それを率直に行動に表す人が多いように思います。
なので、同じ在越日本人に対しても、ベトナム人との関係性=心理的な距離感によって感情や行動の表し方が異なりそうです。
例えば「愛憎」という感情をこの様なゲージで表すとしましょう。
恐らく、筆者を含む多くの在越日本人のように程よい距離間でベトナム人と接して暮らしている外国人は、ベトナム人からすると心理的関係が浅いため、恐らく上の感情ゲージで言うと、【−3】〜【+5】くらいの適度な範囲に収まるのでしょう。あくまでも一線を超えず、憎しみに変わるような事もない、悪く言えばさほど関心がない、そんな「適度な」距離感。
程よい距離の在住者に対するベトナム人の感情レンジ
憎MAX:【-10】←ーー【0】ーー→【+10】:愛MAX
一方で、恋愛関係や肉親関係になると、ベトナム人から見て【−10】〜【+10】までをフルで使う対象とるのではないでしょうか。つまり、「可愛さ余って憎さ百倍」を地で行く形で、死傷事件に及ぶこともあり得るかも。
深い関係になった在住者に対するベトナム人の感情レンジ
憎MAX:【-10】←ーー【0】ーー→【+10】:愛MAX
ところでちょっと脱線ですが、日本人の場合は、よくも悪くも奥ゆかしい民族なので、相手との関係性に関わらず感情行動を【−5】から【+5】くらいの範囲に抑え込んでいるんでしょうね。それを溜め込んでしまうと心の闇となり、ある日計画的な凶悪犯罪に及んでしまうという事なのかも知れません。知らんけど。
ホーチミンでの日本人刺殺事件は何だったのか
さて、先日のベトナム人による日本人刺殺事件は何だったのか。
動機を含め様々な事実が未だに明らかにされていませんが、報道では「加害者の上司であった日本人と職場でトラブルがあり、その腹いせに道端の日本人を刺した可能性がある」と言った情報が出ているものの、ちょっと無理があります。
それどころか被害者の名前や肩書(駐在員なのか出張者なのかすら)なども一切外部には公開されていません。これは割と異例で、現に翌日カナダで起きた日本人シェフ刺殺事件ではすぐに被害者の方の名前が報道されています。
と言う感じなので様々な説が流布していますが、しかし多くの日本人が、これによってベトナムの治安に大きな不安を抱くようになった、という感覚はありませんし、ベトナム人と話しても、「ベトナム人によって日本人が殺されるなんて少なくともこの10年で聞いたことのないケースだ。アンビリーバブルだ」と言う意見で、筆者も同じ感覚です。
なので今回のケースは、個人的な怨恨、つまり何らかの形でベトナム人の深い愛憎が絡んだケースなのでは・・・と言う可能性をどうしても想像してしまうのですが、もはや闇の中です。
いずれにしても、心理的ベースとしてのベトナムへの安心感が根強い事もあり、深圳や蘇州の事件で在中国日本人の間で大きな不安が渦巻いている状況とは、大きく異なります。
ベトナムの治安の未来妄想
しかし、この先5年10年後においても、日本人及び外国人にとって治安の良い状況が続くかと言うと、筆者個人としては、そうはならんのでは、と危惧しています。
いつまで続く?ベトナムの経済成長
現状ベトナムの治安が良い理由の一つとしては、経済成長の状況があるでしょう。ベトナムでは、少なくとも都市部では毎年5〜10%ほども給与水準が上昇し、多くのベトナム人が「昨日より今日、今日より明日」と、前向きに考えていると言われています。
しかし、ベトナムは急速に高齢化が進んでおり(2017年には「高齢化社会(65歳以上比率7%)」に突入)、若さを武器に成長を遂げてきたベトナムの成長が10年後も同様に続いていると考えるのは無理がありそうです。
また治安に関するもう一つの要素として、民族構成や移民の状況があります。誤解を恐れずに言えば、単一民族国家にかなり近く(50近い少数民族はいるものの)、またKLの様にバングラデシュやスリランカなどからの出稼ぎ労働者が増えるとどうしても治安は悪化しますが、ベトナムは現状、そうした状況ではありません。
が、今後経済が成熟するに連れ、移民などの問題は発生し得ます。
対外感情が政治に使われる恐れ
そうなってくると、中国や韓国が反日感情によって内政への不満を逸らしてきたような事が、ベトナムでも起こらないとは限りません。
深圳や蘇州の日本人襲撃の件における犯行動機は公式には明かされていませんが、何らかの反日感情と無関係だと考えるのは不自然であり、その背景には少なからず政府の言動の影響があるでしょう。
「他の人がやっているから自分もやる」の怖さ
もしもそのようにベトナム国内の情勢が怪しい流れになってきた場合、恐ろしいのはベトナム人のもう一つの特性と言われる「他人への同調」の傾向です。
ベトナムでは
「なぜここに並んでいるんだ?」
と訊くと
「分からない。みんな並んでいるからだ」
と返ってくる、という笑い話がありますが、これは実際に住んでいると感じることです。ベトナムには「日本のような同調圧力は無い」なんて言われますが、「圧力が無くても同調するのがベトナム人」という感じ。
そんな国で、もし国民感情が対外的に攻撃的なものに傾いたら・・・と思うと空恐ろしいものがあります。
その場合でも、日本が真っ先に槍玉に挙がるということは無い気がしますけどね。
ベトナムで犯罪被害・トラブルを避けるコツ
最後に参考までに、元バックパッカーとしての(かつて旅先で色々騙された)経験も踏まえ、ベトナム旅行でトラブルを避けるコツをご紹介しておきます。「治安が良い」と言っても相対的なもので、最低限の心がけが無ければ犯罪に巻き込まれる可能性は十分にあります。
- 空港、ベンタイン市場、ブイビエン通り、ハノイ旧市街などの旅行者密集エリアで、路上で声をかけてくる輩(靴磨きなど含む)は例外なく全てハエのように追い払う。その時の顔は猫が「シャーーッ!!」と言う時の表情がベスト
- スリ・ひったくりには常に注意(注意の仕方は割愛)
- 移動はGrabかバス。どうしてもタクシーを使いたければVinasunかMai Linh(ホーチミンの場合)。Grabを呼んだのに「ドライバーと友人だ。代わりを頼まれた」など、イレギュラーな申し出は例外なく全てハエのように追い払う。その時の顔は猫が(以下略)
1番目のなんかは「いやそんなん当たり前っしょww」とか思われそうですが、海外でボッチで歩いてて日本語や英語で
「コニチワ。日本住ンデマシタ。日本友達イマス。サトウサン言イマスネ」
なんて話しかけられたら、意外と飯食いになんか行っちゃって気づいたら詐欺に・・・なんてのはありがちです。しかも初めてこういうのに遭遇すると、自分がその渦中に居ることに中々気づかないんですよね。
かく言う筆者も学生時代にバンコクで、「カトチャンペ!」とか言ってきた微笑みタイ人に運河ボートツアーに誘われて、川の真ん中で「降りたければ8000バーツ(当時2万円ちょっと)払え」とか言われて、後で「これ地球の歩き方に載ってるやつだしww」ってなりましたから。
最近実際にホーチミンで賭博詐欺に遭われた方の貴重な体験談があるのでご紹介しておきます。まさか自分の身にこんな事が起こるとは・・・実際に遭遇するまでは思いもしないものですよね。
もちろん中には親切で声をかけてくれるベトナム人もいます。しかし、上で触れたような観光客密集エリアでは、心を鬼にしてその可能性をかなぐり捨てて、路上で声をかけてくるあらゆる輩を無視する強い心構えを持てば、多くのトラブルは防げます。
それさえ守れば飯は美味いし人は親切だし(矛盾するようだけど、一部の観光客狙いの不届き者を除き、本来ベトナム人は驚くほど親切)、素晴らしい国なので、気負い過ぎずにベトナム旅を楽しんで頂きたいものです。
ということで(どういうことだ)、好き勝手に思うところをタラタラと綴りました。勝手過ぎて公開するのもどうか、という気もしますが、まあ個人ブログですから勘弁願います。
今のところ間違いなく、ベトナムはとても住み心地が良いのです。でも、危うさを感じないといえば嘘になるというのが正直なところ。
10年後のことを考えていたら鬼に笑われるどころか、鬼に群れをなして爆笑されそうなので、気を取り直してビアサイゴンを飲みに行くとします。
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