ベトナムで最も美しいと言われる棚田が広がる場所があるらしい。
そんな情報を目にしたのは、ご多分に漏れず「HERITAGE」の誌面上であった。そう、美しい写真と文章でベトナム最北秘境ハザンへと筆者をいざなった、あの大変けしからんベトナム航空機内誌である。

SONY ILCE-7C (55mm, f/4, 1/125 sec, ISO4000)
HERITAGE誌にて、「ベトナムで最も美しい棚田」という著しく甘美な形容で紹介されていた場所は、「ムーカンチャイ(Mù Cang Chải)」というベトナム北部山岳地帯の秘境だ。
空の上というのはどうも人の感情の振幅を増加させる効果があるようで、ハザンに続き、筆者はそれ以降痛く「ムーカンチャイ」という場所に惹かれ、気付かぬうちに旅を計画し始めていた(いや気付くだろ)。

旅行記を記す前に、ムーカンチャイにまつわるあれこれをご紹介したいと思う。
SONY ILCE-7C (58mm, f/5.6, 1/60 sec, ISO640)
ムーカンチャイとは – ベトナム北部山岳のモン族推しの県
ムーカンチャイ(Mù Cang Chải District)は、ベトナム北西部山岳地帯のイェンバイ省に属する県である。県といっても面積は1200㎡弱で、日本で最小の県である香川県(1877㎡)よりも小さい。ベトナムでは「県」の上位行政単位である「省」の方が日本の県のイメージに近く、ムーカンチャイは大きめの村落群、という塩梅だ。
ハノイから長距離バスで7時間程度、あるいは「サパのちょっと右下くらい☆」と言った雑な説明の方が分かりやすいかも知れない。
ムーカンチャイの特徴として、先ほどから「棚田!棚田!」と連呼しているが、もう一つの重要な要素は「少数民族」。6万人余りの人口のうち約9割をモン族の人々が占めている。
このモン族の方々の存在が、この後触れるムーカンチャイの特徴を語る上で重要なキーとなるようだ。
ムーカンチャイの魅力
ハザンと同様、ベトナム北部山岳地帯の秘境、という響きだけでビアサイゴンを10本は飲み干せそうなほどに魅力的なムーカンチャイだが、さらにベトナムで最も美しい棚田と、モン族の方々の自然な暮らしぶりに触れられるというのだから、ビアサイゴンの24本ケースを今すぐ買いに走る必要がある。
ベトナムで最も美しいと言われる棚田群
ムーカンチャイの棚田は美しい。
美しいというだけでなく、美しい棚田スポットがあちらこちらに点在している。
SONY ILCE-7C (20mm, f/13, 1/100 sec, ISO100)
単に棚田がそこにあるというだけにとどまらず、いずれもまるで伝統工芸作品のごとく、精緻な造形と色彩を魅せてくれる。
しかもそれぞれの棚田スポットごとに表情が異なるのだ。おそらく各所の地形に適切に順応する形で耕作地が作られているためだろう。
SONY ILCE-7C (71mm, f/8, 1/80 sec, ISO160)
ベトナムの他の場所やバリ島などでも棚田を見たが、棚田というものの造形の美しさにこれほどまでに惹かれたことは無かった。

SONY ILCE-7C (20mm, f/8, 1/40 sec, ISO100)
モン族の人々の文化と生活に触れる
ムーカンチャイの棚田を美しいものにしている重要な要素の一つは、間違いなくモン族の存在だろう。
モン族の人々は古来より高原での稲作を生活の基盤にしてきた、言わば「棚田民族」だ。そのモン族が人口の9割を占めるムーカンチャイの地は、言わば棚田作りのプロであるモン族の伝統技術で形作られているといっても過言ではない。
SONY ILCE-7C (48mm, f/8, 1/80 sec, ISO100)
そんなムーカンチャイでは、様々なところでモン族の人々の生活や文化に触れることができる。
例えば、おすすめはモン族のオーナーさんが経営するホームステイに宿泊することだ。
あるいは、バイクドライバーさんがモン族の方だったりすることもあり、様々な話を聞くことが出来る。
SONY ILCE-7C (28mm, f/8, 1/320 sec, ISO100)
挙句運が良ければ、モン族の皆さんの宴会にお邪魔できたりするかも知れない。
SONY ILCE-7C (28mm, f/8, 1/30 sec, ISO5000)
このように、様々な形でモン族の方々と触れ合う貴重な機会に恵まれているのがムーカンチャイだ。
ということで、
そうだ ムーカンチャイ、行こう。
と、ベタなキャッチコピーを拝借したものの、JRで行くことは出来ず、ムーカンチャイの旅には少々のコツを要する。ムーカンチャイへのアクセスや宿、見どころなど、ベトナム随一の棚田をめぐる旅のあれこれについて、これからご紹介していくので、ぜひご参照下さい。
なお、ムーカンチャイについて調べる中で大変お世話になったYukaさんのご紹介を忘れるわけにはいかない。JICA青年海外協力隊員としてつい最近までムーカンチャイを拠点に活動されていた方だ。
筆者はズボラないちバックパッカーのズボラ旅という観点で旅行記や情報を記していくが、ムーカンチャイやそこに住むモン族の人々の文化や生活に関する、日本人の手による情報の深さという意味では、現時点で彼女の発信内容に優るものは無いだろう。

では、ベトナム北部の秘境、ムーカンチャイの美しい棚田の絶景とモン族の方々との触れ合いの旅に、しばしお付き合い下さい。
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