今日はポルトガル中部にある港町、ナザレへ向かう。田舎の漁師町ということで、大変な風情が期待できる。
リスボンからナザレへ鉄道で行くには、一度シントラ行きに乗り、途中で北の方角の「フィゲイラ・ダ・フォス」方面へ向かう列車に乗り換える必要がある。地球の歩き方によれば乗換を含めた所要時間は2時間半~4時間であるという。鉄道にしては法外なバラツキ具合にラテンの息吹を感じる。
ナザレの最寄無人駅「Valado」のアズレージョ
ローカル列車を乗り継ぐこと3時間、無人の小さな駅にたどり着く。ナザレの最寄駅は「ナザレ駅」ではなく、「Valado」という駅である。
無人の小さな駅ではあるが、それは美しいアズレージョ(青いタイルのポルトガル民族工芸)が至る所に飾られており、まるで小さな美術館の様である。
こちらのアズレージョに描かれたのとまさに同じ風景を、後ほど目にすることになる。
駅前には一軒のカフェがある以外は人通りもない。ナザレの市街地まではバスで10分とのことだったので、地元のおばちゃんと一緒に30分程バスを待つ。
ナザレとて古い町なのだから、どうせなら鉄道を敷設する際に少々ナザレ寄りにすれば良かったではないか、と思わないでもない。
細君がポルトガルのおばちゃん達に混ざってバスを待つ光景。
Valado駅前の唯一の飲食店らしきカフェ。おっさんが暇そうに佇んでいる。
犬も暇そうである。
漁師と人情の町、ナザレ
ここは漁師の町であり、田舎の人情味溢れる町でもある。
リスボンのファド・ハウスの旅行記にて、映画「過去を持つ愛情」とその主題歌「暗い艀(はしけ)」に触れたが、ナザレはその歌をアマリア・ロドリゲスが歌ったシーンでもお馴染みの町であるという。

とは言え実際にはサウダーデ的な哀愁ばかりが漂っている訳ではない。ナザレのビーチ沿いの主要エリアであるプライオ地区の細い路地には子供達が遊び、色とりどりの洗濯物が翻り、陽気な活気に溢れている。また、古くからの伝統的衣装であるチェックのスカート、頭にスカーフという出で立ちオバサンも多く見られる(ちなみに未亡人は黒い服というのも伝統らしい)。
リスボンと比べても実に人情と田舎風情に溢れ、歩いているだけで楽しいものである。
シティオ地区からナザレと大西洋の絶景を一望する
下町のプライオ地区からケーブルカーで高台に登ると、シティオ地区と呼ばれるエリアがある。
ケーブルカーを降りて岬の方に向かうと見晴らしのよさそうなカフェがあった。町と海を一望できる。陽気な店員もいる。
ということで、ここでグリーンワインを飲みながらどんよりと曇った空が晴れるのを祈ることにする。何しろここナザレは実は田舎の漁師町であるだけでなく、真っ青な海が売り物のリゾート地でもあるのだ。青い海と青い空がないことには始まらない。もっと言えば、大西洋に沈む大きな夕陽が見たい。
そういえば雑感だが、カフェのお兄さんにしても誰にしても、いかにも西洋系の顔をしていながらほとんど英語を話せないというのが不思議でしようがない。まあ当たり前といえば当たり前だが。
そうした願いが届いたのか、ワインを飲みながら空ばかり眺めていると大西洋の彼方から徐々に雲の切れ間が広がりつつあるのが分かる。テレビも気象衛星も無かった時代、人々はこうして空を眺めながら明日の天気を予想したのだろうか・・・。
酸味と発泡性のグリーンワイン(vinho verde)にハマる
ところでポルトガルに来てから「グリーンワイン(vinho verde)」というものにぞっこんである。
グリーンワインといっても、別に緑色をしているわけではない。何なら、グリーンワインにも「赤」と「白」がある。
グリーンを意味するポルトガル語の「Verde」には、「若い」という意味がある。つまり「グリーンワイン(vinho verde)」というのは完熟していない若いブドウから作られたワインのことで、酸味と若干の発泡性が特徴である。またアルコール度数は10度前後とやや低い。
赤、白いずれもキンキンに冷やして飲むのが一般的で、普通のワインより喉越しが良く後味が非常にすっきりしているので、暑い午後の散策の合間にキュッと飲むともう最高である。日本でも売れると思うのだが、あまり見た事がない。
しかし午後7時を過ぎても雲が晴れ切らないため、一度ケーブルカーでプライア地区へくだり、ホテルのレストランで夕食をとって様子を見ることにする。助手兼妻のKはこのレストランのウエイターのおじいさんがすっかり気に入ってしまった様子。本当に陽気でかわいらしいおじいさんである。ついついワインも進んでしまう。
大西洋に沈む巨大な夕陽
夕陽を見ることを半ば諦めかけ、午後8時半を回ろうかという頃。ついに願いが通じたのか、待ちわびていた太陽が顔を出し、ナザレの町をオレンジに照らし始めた。レストランのおじいさんに別れを告げ、再びケーブルカーで高台に登る。
そこには想像を遥かに上回る絶景があった。
白壁をオレンジに染めたナザレの町と赤く染まった空と海の織りなす雄大なパノラマ。そして巨大で真っ赤な、ユーラシア大陸の西の果てに沈んでいく夕日。かつて大航海時代の船乗り達が夢見た新大陸の方角へ沈んでいく夕日。
ああ、そんな夕陽を追いかけて海岸への緩やかな坂道を駆け降りていくなど、まるで少年時代に戻ったかのようである。
ナザレから見る夕陽がここまで美しいとは思っていなかったため、すっかり恍惚としつつ、今宵の宿「ホテル・マレ」へ帰る。
明日はポートワインの故郷、ポルトへ向かう。
ナザレの位置
(2007年7月16日)
ポルトガル旅行記【陽の当たる坂道に憧れて】記事一覧
































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