猛暑のグエン朝王宮から帰還し、フエ新市街の安宿の簡素なベッドルームで粗末なシャワーを浴び、質素な天井を眺めつつ夕暮れを待つ。
何やらバックパック一人旅の様な情景描写であるがれっきとした家族旅行である。
ホテルを出ると少しだけ涼しい風が吹き始めた路地を兄弟がじゃれ合いながら歩いていた。
SONY ILCE-7C (177mm, f/5.6, 1/200 sec, ISO1000)
夕暮れと共に本気を見せるフエの飲食店街
うだるような暑さのフエの町も夜になると活気を取り戻す。
新市街のPerfume River沿いのレロイ通りから一本内側に入ったVo Thi Sau通りからTran Cao Van通り辺り(下地図参照)を歩けば多くの飲み屋や飲食店街が広がっており、ビアーを燃料として生きている人種としては胸躍ることこの上ない。
SONY ILCE-7C (100mm, f/4.5, 1/125 sec, ISO1250)
SONY ILCE-7C (52mm, f/3.5, 1/60 sec, ISO320)
SONY ILCE-7C (28mm, f/2.8, 1/30 sec, ISO125)
リーズナブルな本格フエ家庭料理レストラン「Nhà Hàng Gạo」
さて、このようにフエの町を闊歩すれば、犬も歩けばよろしく美味そうな店にありつけそうなものだが、実はこうしたベトナム料理店の中にも歴とした「美味い店」と「そうでもない店」とが存在する。
かつて沢木耕太郎先生の「深夜特急」に憧れてバックパック旅を始めた筆者は、少し前までは「ふらりと立ち寄った店にこそ神は宿る」と信じていたところが多分にあったのだが、いざベトナムに在住してみると、やはり現地のベトナム人達に薦められる店というのは明らかに頭一つ抜けて美味いということを知ってしまった。
その様な訳でフエ初日の今宵訪れることにしたのは、筆者の勤務先のフエ出身のベトナム人社長から薦められたフエ料理屋である。
「フエ出身の」「ベトナム人」「社長」のおすすめという、ロイヤルストレートフラッシュもかくあるべしと言うレベルのパワーワードの羅列である。美味くないはずが無い。
フエの伝統的家屋「ニャ・ルオン」の佇まい
ということで暑さも和らいだフエの飲食店街を通り抜け、社長おすすめのフエ家庭料理レストラン「Nhà Hàng Gạo」へやって来た。この重厚な木の柱を特徴とする佇まいはニャ・ルオン(Nhà rường)と呼ばれるフエの伝統的な建築様式であるようだ。
SONY ILCE-7C (28mm, f/2.8, 1/30 sec, ISO320)
レストランの中央には中庭が設けられ、客席は全て開放的なオープン席となっている。
SONY ILCE-7C (28mm, f/2.8, 1/30 sec, ISO800)
SONY ILCE-7C (28mm, f/2.8, 1/30 sec, ISO640)
宮廷料理起源のフエ家庭料理を安価に楽しむ
今日のフエで家庭料理と呼ばれるものは、かつてのグエン王朝の宮廷料理を起源とするものが多いようだ。従って味はもちろんのこと、目でも楽しむ事が出来る料理が多いと言われている。
代表的なフエ伝統料理には、例えばこのバインナム(bánh nậm)がある。タピオカと米粉で作られた生地の中にエビなどを入れ、バナナの葉で包んで蒸したものだ。半透明でもちもちした生地が非常に優美である。
揚げ春巻きもフエ風のそれは皮が薄くサクサクしており、ビールが止まらない危険な逸品である。フエでは皮に網目状の模様が施されたものもある。
SONY ILCE-7C (40mm, f/3.2, 1/40 sec, ISO5000)
もちろんミーサオ(ベトナム風焼きそば)の様な一般的なベトナム料理も用意されており、好みに関わらず多くの人の舌を満足させてくれる豊富なメニューもNhà Hàng Gạoの魅力である。
SONY ILCE-7C (38mm, f/3.2, 1/40 sec, ISO2000)
思春期の小中学生男子2名を含む家族4人でたらふく料理を食べた(上の写真はほんの一部)上にビールを5本ほど空けたにも関わらず、合計5千円程度で済んだのだから、そのコストパフォーマンスたるや社長表彰ものである。
一つだけ難点を挙げるとすれば、料理が出てくるまでにやや時間がかかる事であろうか。しかしそれはベトナムにおいては頼んだものと全く違うものが出てくるのと同様に実によくある事である(困ったことに)。
Nhà Hàng Gạoのマップ
フエの町で美術品の様なプジョー404に出逢う
満ち足りた気分で宿へ戻る。
そう言えば途中の道でとんでもないプジョーに遭遇した。404という、1960年にカロッツェリア・ピニンファリーナが初めてデザインしたプジョーであるようだ。
そのレアさもさることながら、さながら美術品の如く綺麗に整備された様子に思わず歓声を上げてしまった。いかに元フランス領とはいえ、なぜフエの地にこのような車が・・・
SONY ILCE-7C (35mm, f/3.2, 1/40 sec, ISO1600)
SONY ILCE-7C (36mm, f/3.2, 1/40 sec, ISO2500)
SONY ILCE-7C (36mm, f/3.2, 1/40 sec, ISO6400)
SONY ILCE-7C (54mm, f/4, 1/60 sec, ISO2000)
宿でシャワーを浴びて細君と缶ビールを開ける。バックパッカー宿は夜になると光量の乏しい照明のためにより一層の安宿感を醸し出す。
明日は日帰りでホイアンを訪れる計画である。
SONY ILCE-7C (28mm, f/4, 1/30 sec, ISO2000)
つづき
(2022年9月1日の旅行記)
ホーチミン発フエ・ホイアン4日間の旅 記事一覧
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