9時起床。昨日は20時くらいまで雨が降っていたが、その名残の薄い雲が日光を和らげている。概ね好天だ。雨季にもかかわらずこうも天候に恵まれると、逆に旅の後半はずっと雨なんじゃないかと不安になってしまう。
そう、今日は9日間の旅の5日目。ようやく折り返し地点なのだ。2日目の相方の発言ではないが、もう長い年月ラオスで暮らしているような錯覚を覚える。日々の出来事が、あまりに高密度に過ぎる故なのであろうか。
「フォー」由来の「フー」を食べてバンビエン中心部をぶらつく
ところで、タイやラオスで最も一般的な半透明の米製の麺(メニューでは”Rice Noodle with Soup”, “Fried Noodle”等)のことをラオスでは「フー」という。ベトナムの「フォー」から来ているとのこと。ラオス文化の多くはタイ北部のそれと共通なのだが、このように要所要所にベトナムも混ざっているのが面白い。
その「フー」と共に、タイ、ラオスあたりの朝食で個人的御用達であるソイミルクを補充する。
冷蔵庫を眺めていると、様々なラオス語(タイ語?)の商品の写真の中にカタカナで「バーモントカレー」と言うのがデーンと鎮座していた。バーモントカレー、強し。
「フー」と「ソイミルク」で満足し、町へ繰り出す。
繰り出すといっても、何があるわけでもない。インターネットカフェで時間をつぶし、町なかにある渋い寺や、川、橋、民家などを眺めながらブラブラする。
髪を切っている。ここが職業的な床屋の店なのか、素人が切っているだけなのかは分からない。一応モデルの写真が壁に貼ってある。
便器が販売されていた。DIYも盛んなのだろうか。トイレばかりは設置を間違えると悲惨なことになりそうなので入念に行いたい。
名前もよく分からない寺があった。面白い彫像があった場合はとりあえずその姿を真似して写真に収めるという暗黙のルールがこの旅にはあった。
ソン川に掛かるボロい木橋を渡る
ソン川を渡る木橋があったので渡ってみることにする。
川では子供達が遊んでいた。それ以外には特に何もなかったが、観光地でも何でも無い地元の人々の生活風景を見るのはやはり楽しい。
昼時を迎えたので適当に視界に入った食堂風の店に腰を落ち着ける。フライド・ヌードルを頼む。言い換えれば「揚げフー」となるだろうか。
昨日宿で食したものとは微妙に味付けがことなり、これはこれで美味いのだが、ナンプラーよりは塩風味が勝っている。やはりそれぞれに家庭の味というものがあるようだ。確かに日本でも、一言で「ラーメン」と言ったとて千差万別なのだから、違って当り前である。
ところでラオスには、日本でいう石神秀幸氏のような「フーの神様」のような人物がいて、「ここのフーは魚系の出汁と中細の麺が絡みあって妙をなしている」とか「あそこのは基本的には背脂チャッチャ系なのだが、それが独特の鶏ガラとトンコツのミックススープと絶妙なハーモニーを醸し出している」などと評論するような文化はないのであろうか。
ソン川を渡ると岩山と水田が織りなすバンビエンの隠れ絶景があった
相方の希望により、今度は宿のそばの船着き場からソン川の対岸へ渡り、特に目的も定めず歩いてみることにする。
宿やバスターミナルを含むバンビエンの中心部からは、ソン川を挟んだ反対岸の光景は、ジャングルに隠れておりよく見えないのである。そちら側の風情を見てみたいという相方の意見に、筆者も大いに賛成である。対岸に着いて船を降りるとすぐに雑貨屋やカヤ葺きの民家などが並ぶ路地が続く。
その集落を過ぎてさらに歩いていくと、やがて想像もしていなかった絶景がパーっと目の前に広がった。鋭い岩山の麓を一面埋め尽くすように美しい水田が敷き詰められていたのである。宿のある対岸からはジャングルに隠れて岩山以外に何も見えなかったのだが、まさかこのような広大でのどかな風景が広がっているとは夢にも思わなかった。
水田で遊ぶ子供たち、三角の麦わら帽子で稲作を行う人々、我々に道を譲るように身を寄せ合って歩く野良牛の群れ、岩山と水田と空の青と白の、刻々と変わっていくコントラスト。何もない道だったが、決して飽きることはなかった。
道の真ん中に群れて歩いていた野良牛たちだが、人とすれ違うときは縦一列に並んで通してくれた。ここの牛たちは非常に行儀が良いようだ。
この動物は鹿の仲間だろうか?何もない農村風景なのに、本当に飽きることがない。
などと格好良いことを言ってみたものの、30分くらい歩いているとさすがに飽きてきたので引き返すことにした。
途中、幾人かの地元のオッサン達に、「この先に洞窟がある」みたいなことを言われたのだが、「モトバイクで5キロ」とか言ってるように聞こえたので、断念して船着き場に戻ることにした。
空を覆っていた雲が晴れ、青空を見ることが出来た。
宿に戻って30分くらいすると、案の定雷鳴が轟いてきた。パターン化されていて分かりやすい天候で大変助かる。宿で夕食を頂く。
何かよく分からない鶏肉と野菜の炒めものが激辛で相方は漫画のように顔をしかめたものである。表情をお見せできないのが残念である。
少しずつ輪郭を暮色に溶かしていく岩山とビアラーオとともに、バンビエン最後の夜は更けていく。元々旅程に入っていなかったこのバンビエンという小さな町だが、すっかり気に入った。元々ラオスという国は癒やしを求めて訪れるような国だと思っているのだが、バンビエンはまるでその象徴のような町であった。
明日は再び首都ビエンチャンである。
[2005年7月20日]
バンビエンの位置
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