ベトナム生活編

記録的寒波に身を貫かれつつ3年ぶりに日本で年を越す

この年末は日本海側を中心に記録的な寒波に見舞われているという。

常夏のタンソンニャット国際空港で羽田行きの深夜便に乗り込む時点で覚悟はしていたが、早朝の東京の鋭い大気は、ホーチミンの自宅クローゼットから引っ張り出した薄手のジャケットをいとも簡単に貫き通した。

3年ぶりに降り立つ真冬の東京は、身を切るように冷たく、そして懐かしかった。

早朝の羽田空港滑走路Apple iPhone 15 Pro (6.7649998663709mm, f/1.8, 1/1400 sec, ISO80)

 

ベトナムに赴任してからの2回の年越しは、家族と共にムイネーやカンボジアで過ごした。

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しかし今年の3月に一足先に家族が日本に本帰国し、単身赴任生活に移行したため、今回の年越しは久々に家族の暮らす日本で過ごす事にした。

旅先の非日常での年越しももちろん心躍るのだが、今回の一時帰国が近づくにつれ、ふと、それらに勝るとも劣らないほど心待ちにしていることに気がついた。

冬の夜の凛とした静けさ、紅白歌合戦と日本酒、ゆく年くる年と除夜の鐘・・・かつて当たり前だった「日本での年越し」と言うものを、無意識の中で想像以上に欲していたのだろう。

 


 

2024年は、3月の家族の本帰国とそれに向けた準備とともに始まった。

家族の帰国日当日、タンソンニャットの国際線出発ロビーで家族を見送った時には、何かよく分からないものに身も心も引き裂かれそうで、正直、少々参っていた。振り返れば、それは単に寂しかったからではなく、「家族でのベトナム生活」という一つのかけがえのない時代の終焉に対する、一種の喪失感だったように思う。

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その心境には既視感があった。3年前、ベトナム赴任が決まり、家族で最後のキャンプに行った際の、やはり一つの時代の終わりを眼の前にした喪失の予感だ。

子供達との時間は、常に有限で、二度と同じ瞬間は訪れない。

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しかし、それらの経験を通して、それはもう「知っている感情」となった。

新たな世界線を選択するという決断は、過去の美しい生活の延長線上にある世界線を諦めることを意味する。しかし、何かを失う事で、今まで見えていなかった新たな景色が見えてくる、などと言えば綺麗ごとのようだが、あながち間違ってはいないという事を、もう知っている。

新たな家族のかたちは、少しの不安を乗り越えた後、強い絆をもたらしてくれる。

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単身赴任生活に移行して、9か月が過ぎた。

一時はどうなる事かと思ったが、結果として身も心も引き裂かれず、一応真っ当な人間の体を保っている。むしろ、悪くない9か月だったように思う。

家族との物理的な距離は遠くなったが、良かった面もある。やんちゃが過ぎる思春期男子に関して細君一人では対処しきれない案件も散発し、筆者が遠距離支援を行っているのだが、子供たちと面と向かっていないからこそ感情的にならず、LINEや電話で冷静に会話をすることが出来ている気がする。

心配だったのはワンオペになってしまった細君だが、最初の数カ月こそてんやわんやだったものの、何とか家庭を回してくれている。大変ありがたい。最近はパートでの仕事も開始したため、週末の電話で細君から聞ける小ネタが増えて、良い気分転換になっているように感じる。筆者も可能な限りベトナムからの遠隔支援を続けたい。ただ、それだけでは手詰まりになるのは時間の問題であり、今後の不安要素だ。

そう、電話が面白いと言えば、子供たちはデジタルガジェットやアニメの話題が好きで、特に長男はカメラやチャリンコ、スキーの趣味を筆者から受け継いだため、これまでよりもLINEなどで会話をするのが楽しくなってきた。中高生になると親と話してくれなくなるのかと思っていたので、これは嬉しい誤算だ。

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一方、思春期の一端を異邦で過ごしたことで、同じサイゴンの空の下で学んだ(遊んだ)友達との絆も生まれ、もう一つのホームタウンのように感じてくれているのも嬉しかった。実は大晦日の今日も、長男はホーチミン日本人学校時代の友達と会っていたようだ。

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総じて、子供達にとってはベストなタイミング(年齢)での本帰国だったと思う。

 

旅の面では、家族をアテンドしながらでは行けないような秘境にも、いくつか訪れることが出来た。ベトナム国内だけでも、まだまだ行かなければならない場所がある事を知った。

ハザン省, ハザンループ, 渓谷の絶景

Apple iPhone 15 Pro (2.2200000286119mm, f/2.2, 1/3500 sec, ISO50)
ハザン省にて

ムーカンチャイの棚田

SONY ILCE-7C (20mm, f/8, 1/40 sec, ISO100)
ムーカンチャイにて

ベトナム最北秘境「ハザン」- 天険の絶景と自然体の少数民族達
「ハザン」の記事一覧です。

 

また、これは世界の七不思議と言っても良いのだが、単身になった途端に、誰からどう伝わったものかお誘いを受ける事が増え、様々な方面の方々とのご縁が広がった1年でもあった。大変ありがたいことだ。

 


 

「なんだかんだでベトナム生活、めっちゃ楽しんでるじゃあないか」

などと思われるかも知れないが、それは誤解である。

「ベトナムにいるから」楽しそうなのではない。

僕が日本に居た時からの知り合いなら、思い出して欲しい。僕はいつだってどこに居たって、キャンプにスキーにドライブにオフ会に飲み会にと、常に楽しそうな話しかしていなかったように思う。

命の懸かった心臓手術の入院生活だって、ネタにしていたのだから。

Overhaul Journey | 僧帽弁閉鎖不全手術の記録
僧帽弁閉鎖不全(弁膜症)の発覚から手術・入院(@39歳)→復活までの貴重な体験を記録

そういうおめでたい人間なのだ。

 

いずれにしても、総じて2024年も、プラス>マイナスで差し引き悪くない年だったように思う。

おめでたい性格なので、悪いことは忘れてしまった。

2025年はどうだろう。

いい事ばかりでは無いかもしれない。でも悪い事ばかりでもないに違いない。

新年も、何とか差し引きでプラスになればよいと思う。

支えてくれる家族、友人、同僚たちには感謝しかない。

2024年大晦日の日の入り

Apple iPhone 15 Pro (9mm, f/2.8, 1/2500 sec, ISO25)
2024年最後の日没

 


 

2024年最後の夕日が沈み、大晦日の夜が穏やかに更けていく。

今夜は紅白歌合戦からの、ゆく年くる年で新年を迎えるつもりだ。

冷蔵庫から板わさを取ってこよう。焼酎をお湯割りにしてもいいかも知れない。

特別なことは何も無い。

しかし、日本の年越しは、本当に素晴らしい。

 

旧年中はお世話になりました。

来年もどうぞよろしくお願い致します。

よいお年を。

OLYMPUS E-M1MarkII (34mm, f/3.8, 1/60 sec, ISO640)

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