ビエンチャンの定宿で目を覚ます。昨晩相方に結婚を申込み、実質的な夫婦となったのが夢だったかのようで妙に実感がない。もしかするとテレビで某アニメの名シーンが放映されているというカオスな状況のためかも知れない。
ラオスの首都ビエンチャンからバンコクまでは空路でわずか55分。機内サービスが慌ただしく通路を駆け巡る。
眼下に雲を眺めると、地上で雨が降ったり止んだりを繰り返す訳がよくわかる。雲と雲の間隔が見える。厚い雲と薄い雲の合間が見える。これらが重なり合いながら地上に光と影とスコールをもたらしているのだろう。
相方も最初のうちは窓の外の景色に目を向けていたが、気づくとすっかり寝入っている。緊張が解けたのだろう。
そんな風に、ラオスとの別れはとてもあっけなかった。
バンコクは、相変わらずのムッとした熱気と人いきれに包まれていた。ただ今日は日本のようなしとしと雨がパラついていたため、過ごしやすかったと言えばそうかもしれない。
とりあえずカオサンの宿に荷物を置き、サイアムへ繰り出してセンヤイナーム(きしめんのようなヌードル)を食す。人心地ついたところでデパートで買い物をしたり、映画を見たりする。今日は、「スィング・ガールス」を鑑賞した。
CASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600 (9.2mm, f/3, 1/8 sec, ISO0)
バンコクはやはり居心地がいい。都会の安心感があると言った方が正確だろう。人と車の喧騒は時に神経を逆なでるが、反面、東京に居るかのような利便性を提供してくれる。あるいは人々の他人への無関心とも関係があるのかもしれない。
日程上、今夜がこの旅の最後の夜なのだが、筆者の気持ちの上ではバンコクに着いた時点で旅は終わっている。そのことは今回に限ったことではない。
アジアの旅では多くの場合、まずバンコクでアジアの熱気の洗礼を浴び、やがて安住の地に戻るかのようにバンコクに帰ってくる。そんな場所にふさわしいほどに、バンコクの街は混沌と包容力と利便性を全て兼ね備えている。そんな街だから、バンコクに戻ってきた時点で旅の緊張感は解き放たれ、同時に現実へ引き戻される。この街はアジアの旅の出発点であり、終着点だ。
夜のチャオプラヤー川を眺めてシンハビアーをたらふく飲みながら、相方と旅の思い出を語り合う。奇妙な感覚だ。元来旅は一人に限るという偏った考えの持ち主であったため、感想を語り合う相手が居る旅というものが非常に希少である上に、向かい合って座る女性とこれから結婚生活を送るという事実がどうもピントを結ばない。
それにしてもバンコクの夜は静まることを知らない。この混沌とした街は、我々が明日の朝日本へ帰ることなど知る由もなく、さらに熱気を帯びていく。
CASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600 (7.1mm, f/2.8, 1/8 sec, ISO0)CASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600 (7.1mm, f/2.8, 1/8 sec, ISO0)
[2005年7月23日]
以上で、「ラオス旅行記【果たして僕は結婚出来るのか?】」は完結です。またどこかの国でお会いしましょう。
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