今日はフエ郊外の阮朝歴代皇帝の帝陵を見て回る。この旅の実質的な最終日だ。
それがまるで朝の必要な儀式であるかのようにブンボーフエをデリバリーしてもらう。
フエの路地は今朝もささやかな活気と静謐さに満ちている。
SONY ILCE-7C (36mm, f/3.2, 1/40 sec, ISO125)
SONY ILCE-7C (64mm, f/4, 1/80 sec, ISO125)
本日は、宿に頼んで半日だけ車をチャーターし、フエ郊外にある3つの帝陵「トゥドゥック帝陵」「カイディン帝陵」「ミンマン帝陵」を回ってもらう・・・はずであったが、後述の通りあまりの暑さと想像を超える帝陵のスケールに、最後のミンマン帝陵は断念したのであった。
気の利く宿の若女将は予めその事を予見しており、「全ての帝陵を回っても似通っているし疲れるので2つで十分かもしれない」と言ってくれていたので、2つのみで市内に戻るかも知れない旨はドライバー氏に伝えてあった。車のチャーター料金は、3つ全ての帝陵を回る場合には800,000VND(約4千円)、2つで止める場合には700,000VND(約3,500円)であった。
なお、個人的にはトゥドゥック帝陵とカイディン帝陵はフエ旧市街の阮朝王宮よりも格段に趣深く印象深い、素晴らしい場所であった。以下、トゥドゥック帝陵とカイディン帝陵の見どころと空気感を写真多めでご紹介したい。
フエ郊外の帝陵の麓にある「線香村」
トゥドゥック帝陵、カイディン帝陵のあるフエ郊外の丘陵地帯に差し掛かる辺りに、トゥイスアン(Thụy Xuân)村、通称「線香村」がある。
元々は帝陵を巡る際に線香を購入する場所であり、観光客が立ち寄るような場所ではなかったようなのだが、数年前からSNSで話題となり、伝統衣装を纏って写真を撮影するスポットとして有名になったようだ。ベトナム人は日本人以上にSNS映えが大好きであるため、これはうってつけの観光スポットであろう。
映え撮影に余念のないベトナム人達を車窓から撮影しつつ、帝陵を目指す。
SONY ILCE-7C (34mm, f/3.2, 1/320 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C (28mm, f/2.8, 1/1000 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C (33mm, f/3.2, 1/800 sec, ISO100)
トゥドゥック帝陵 – 時が止まった美しき緑の庭園
トゥドゥック帝陵は第4代皇帝トゥドゥック帝(在位1847~83)の陵墓で、生前にも離宮として利用されていたようだ。トゥドゥック帝は阮朝歴代最長の在位期間であり、阮朝最盛期最後の皇帝であったらしい。
帝陵内は豊かな緑と池が印象的な非常に穏やかな空間だ。墓陵となる前に別荘として使用されていたためか、どこか避暑地のような隠れ家的な趣を感じさせる。特に墳墓は深い緑が周囲から隔絶された空気感を醸し出し、殊更に無常の時の流れを思わせる素晴らしい場所であった。
なお敷地は非常に広大で、全てをゆっくりと見て回るには優に1時間を要するだろう。9月初旬の暑さの中では中々の修行であり、トゥドゥック帝陵終盤には3つ目のミンマン帝陵を見る気力は完全に雲散霧消していた。
蓮池「ルー・キエム」
さて、トゥドゥック帝陵に入ってまず目にするのは蓮池「ルー・キエム」だ。この池を中心に寝殿や陵墓が配置されている。この池の存在が、この帝陵を墓といよりも庭園に近い趣に見せているのだろう。
SONY ILCE-7C (20mm, f/7.1, 1/250 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C (20mm, f/8, 1/500 sec, ISO100)
本殿(和謙堂・温謙堂・良謙堂・鳴謙堂)
本殿にはトゥドゥック帝と妻が祀られている。実際に皇帝が腰掛けていた綺羅びやかな装飾の椅子が展示されており、伝統衣装をレンタルして椅子に座っての撮影が可能なようだ。
建築は紫禁城を手本に採ったと言われる阮朝王宮と同様、中華様式の色合いが濃い。
なお、このトゥドゥック帝陵の建造物に「謙」の文字が多く使われているのは、同帝在位中にフランスの侵攻を許してしまった事に対する自戒の意味が込められていると言われている。
SONY ILCE-7C (71mm, f/4, 1/80 sec, ISO400)
SONY ILCE-7C (20mm, f/4, 1/30 sec, ISO800)
SONY ILCE-7C (20mm, f/2.8, 1/30 sec, ISO400)
SONY ILCE-7C (35mm, f/3.2, 1/40 sec, ISO400)
SONY ILCE-7C (89mm, f/4.5, 1/100 sec, ISO2500)
至謙堂
こちらは本殿の斜向いにある至謙堂である。日本の寺院のようなどこか懐かしい趣がある。
SONY ILCE-7C (28mm, f/6.3, 1/320 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C (102mm, f/4.5, 1/125 sec, ISO500)
至謙堂の隣には、まるでアンコール遺跡群のような廃墟が見られた。
SONY ILCE-7C (20mm, f/2.8, 1/1600 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C (20mm, f/2.8, 1/1250 sec, ISO100)
トゥドゥック帝墳墓 – 時の流れから隔絶された空間
いよいよトゥドゥック帝陵のクライマックス、墳墓へ向かう。
帝陵敷地内で最も奥まったエリアにある墳墓は、近づく程にしんとした静けさを深めていく。
墳墓の入り口に当たるこの廟は「碑亭」と呼ばれ、トゥドゥック帝の偉業が記されているようだ。
SONY ILCE-7C (20mm, f/8, 1/250 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C (20mm, f/8, 1/100 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C (40mm, f/3.2, 1/100 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C (20mm, f/7.1, 1/200 sec, ISO100)
いよいよ墳墓の本体である。とは言え遺体はここには安置されておらず、所在は未だに謎に包まれているというのは有名な話のようだ。
SONY ILCE-7C (20mm, f/7.1, 1/320 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C (20mm, f/7.1, 1/250 sec, ISO100)
木々に取り囲まれ周囲から断絶されたかの様な空間は、ここだけ往時から時が止まったままであるかの如き錯覚をもたらす。
SONY ILCE-7C (20mm, f/7.1, 1/200 sec, ISO100)
供え物はやはりフルーツ。中国様式と南国様式の融合を見る。
SONY ILCE-7C (101mm, f/4.5, 1/640 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C (78mm, f/5, 1/125 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C (20mm, f/2.8, 1/2500 sec, ISO100)
実に素晴らしい場所であった。トゥドゥック帝陵を後にしてカイディン帝陵へ向かう。
SONY ILCE-7C (105mm, f/4.5, 1/160 sec, ISO100)
トゥドゥック帝陵のアクセス
フエ市街地からカイディン帝陵までは車で20分弱。かなりマニアックな道を通るため自力では難しく、チャーター車かツアーで行くのがよいでしょう。
カイディン帝陵 – アジアとフランスの融合
カイディン帝陵は阮朝第12代皇帝カイディン帝(在位1916~25)の陵墓。カイディン帝は阮朝最後の皇帝、バオダイ帝の一つ前の皇帝である。
カイディン帝陵の面白さはなんと言ってもヨーロッパのバロック様式との融合だ。フエにある阮朝王宮や上のトゥドゥック帝陵、ミンマン帝陵などの時代と異なり、カイディン帝代には既に中国の支配下からフランス統治下に移っていたため、カイディン帝陵はヨーロッパ式建築の影響を多分に受けている。
SONY ILCE-7C (28mm, f/9, 1/250 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C (20mm, f/4.5, 1/400 sec, ISO100)
正面の階段を登りきったところには帽子やアイスを売っている売店がある。
あまりの暑さに皆立ち寄っていた。よく考えられている。
SONY ILCE-7C (20mm, f/4.5, 1/80 sec, ISO100)
我が家の少年たちもここでアイスに食いついていた。
SONY ILCE-7C (20mm, f/2.8, 1/1000 sec, ISO100)
ガイドブックや様々なサイトでカイディン帝陵は「フランス建築の影響を受けた華々しい装飾」などと評されているが、カイディン帝陵の前半戦に置いてはそれは少々当てはまらないように感じた。先程のトゥドゥック帝陵と異なり石造りであるためグレー主体であり、色彩などの鮮やかさは少々乏しい印象であった。
しかしその印象は後ほど覆されることになる。
SONY ILCE-7C (20mm, f/6.3, 1/30 sec, ISO100)
豪華絢爛な啓成殿
カイディン帝陵のクライマックスがこの「啓成殿」である。特に圧巻なのは内装の装飾だ。中に入った瞬間、先程の地味な印象は木っ端微塵に吹き飛んだ。
SONY ILCE-7C (20mm, f/8, 1/200 sec, ISO100)
啓成殿内部には玉座に鎮座するカイディン帝像があり、その下に遺体が安置されているという。
観るべきはどこから鑑賞すればよいのか分からない程の豪華絢爛な装飾だ。先程のトゥドゥック帝陵墳墓とは別の意味で趣深い。
SONY ILCE-7C (20mm, f/2.8, 1/30 sec, ISO320)
なお、この建築に辺り大増税を繰り返したため、ホーチミン氏を始め国民から大きな反発を受けたという逸話がある。そうした逸話にもまた、深い緑と静寂のトゥドゥック帝陵とはまた別の面白味がある。
SONY ILCE-7C (20mm, f/8, 1/30 sec, ISO500)
この辺りの装飾は中華を感じる。日本から取り寄せた素材も使われているとの話だ。節操がないと言えば身も蓋もないが、とことん融合を極めている辺りはそれはそれで面白い。
SONY ILCE-7C (20mm, f/2.8, 1/40 sec, ISO100)
カイディン帝陵の上空は快晴である。非常に暑い。
フエ市街に戻り、昼食としばしの休憩を摂ることにする。
SONY ILCE-7C (20mm, f/8, 1/400 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C (67mm, f/9, 1/160 sec, ISO100)
カイディン帝陵のアクセス
フエ市街地からカイディン帝陵までは車で20分強。トゥドゥック帝陵同様道程はかなり入り組んでいるので、チャーター車かツアーで行くのが吉。
トゥドゥック帝陵・カイディン帝陵の入場料
カイディン亭陵、トゥドゥック亭陵の単品入場料はいずれも大人150,000VND、子供30,000VNDだが、フエ旧市街のグエン朝王宮やミンマン帝陵とのセット割引チケットもあるので、それらについては下記をご参照頂きたい。
(2022年9月3日の旅行記)
ホーチミン発フエ・ホイアン4日間の旅 記事一覧
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